「他国より速く」核兵器増強の中国、その狙いは? 先制不使用強調も高まる懸念

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 中国が核戦力を急速に拡大させている。保有する核弾頭数は増加しており、大陸間弾道ミサイル数は10年以内にアメリカやロシアに追いつくとの予測もある。それらの背後には4つの具体的理由があると専門家は論じる。

◆2030年までに2倍に拡大との予測
 アメリカ国防総省が昨年公表した報告書によると、中国政府は2030年までに1000発を超える核弾頭を保有しようとしている。これは現在の推定数の2倍であり、増強の動きが始まった6年前に比べて4倍の増加だ。中国はミサイルサイロの建設や核弾頭を搭載可能な潜水艦の配備を進めており、これにより迅速な核攻撃能力を持つとされる。

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の報告書によると、中国の核弾頭数は2022年の410発から2023年には500発に増加している。SIPRIのアソシエイトシニアフェローであるハンス・クリステンセン氏は、「中国はほかのどの国よりも速く核兵器を拡大させている」と述べている。

◆核戦力増強の「4つの理由」
 中国が核戦力を強化している理由については、複数の要因が指摘されている。

 カーネギー財団シニアフェローのアシュリー・テリス氏は、米フォーリン・アフェアーズ誌(6月17日)への寄稿を通じ、「中国は4つの具体的な軍事目標を持っている」と指摘する。第1は生存可能性の向上だ。仮にアメリカが先制攻撃を行った場合に備え、中国の兵器の数を増やしておく狙いがあると氏は指摘する。

 第2に、報復効果の向上がある。アメリカの先制攻撃に対し、中国の報復攻撃により破壊されると予測されるアメリカ側資産の規模が大きくなるほど、さらなる抑止効果につながる。さらに、第3、第4の要因として、アメリカの保有する高度な核に対し数で対抗する意図があることと、アメリカ以外の仮想敵国に対する対抗措置としての働きを挙げている。

 また、核のパリティ(均衡)の考え方は大きなポイントとなる。米ワシントン・ポスト紙(6月16日)によると、カーネギー財団シニアフェローの趙通(ジャオ・トン)氏は、個人的には見解が異なるとしつつ、「しかし、多くのアメリカの専門家は、核のパリティが中国の拡張の目標であるとすでに想定していると理解している」と述べている。

◆「先制不使用」強調するも、批判かわす狙いか
 SIPRIは、中国は核戦力の「大幅な」拡張の最中にあり、10年以内にアメリカやロシアと同数の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を保有する可能性があると予測している。

 中国は核兵器の「先制不使用」政策を強調しているが、これは国際的な圧力をかわすための戦略だと受け止められている。英フィナンシャル・タイムズ紙(8月2日)によると、趙通氏は「中国は無条件の先制不使用宣言を強調することで、公式な核軍縮交渉に参加する国際的な圧力をかわそうとしている」との見方を示す。

 中国が先制攻撃を意図している兆候は現在のところないようだが、急速な核戦力の拡大にアメリカで警戒が高まっている。

Text by 青葉やまと