“完全なバカ”中国紙が豪外相を罵倒 中国批判・日本との連携強化に怒り心頭か
中国国営紙グローバルタイムズ(環球時報)は、「中国は弱者を尊重しない」などとするビショップ豪外相の一連の中国批判に対し、12日付の社説で激しく反論した。その中には、「オーストラリアはかつて、ヨーロッパから流れてきたならず者やアウトローが放浪する土地だった」という差別的とも受け取れる持論や、外相への人格攻撃を思わせる記述もある。複数の西側メディアがこれを批判的に報じている。
【豪首相の親日発言に対する中国人の怒りに「燃料を注入」】
グローバルタイムズは、中国共産党の機関紙、人民日報の国際版(英語・中国語)だ。その社説は中国政府の見解を代弁したものだとされている。
同紙は、ビショップ外相が「オーストラリアは平和と自由主義の価値、法の支配を守るために中国に立ち向かう」「中国は弱者を尊重しない」などと語ったとし、それが「中国の人々に衝撃を与えた」と記す。発言は先週、現地メディアのインタビューに答えた際のもので、同外相はその中で、中国による東シナ海上空の防空識別圏設定についても批判した。(英・ガーディアン)
社説は、中国がオーストラリアの最大の貿易相手国であることに繰り返し触れ、「中国への依存度を高めている」国の外相から中国批判が出たことが「信じられない」と憤る。また、同国のアボット首相がこれに先立ち、第2次大戦中のシドニー湾攻撃について、日本軍の潜水艦乗組員の「スキルと道義心」を賞賛するコメントをしたことにも触れ、今回のビショップ発言は、それに対する中国人民の怒りに「燃料を注入した」と非難している。
【日豪連携を牽制か】
問題になっている「ならず者」「アウトロー」の記述は、「中国は弱者を尊重しない」という発言に対する反論の意図で書かれたようだ。「オーストラリアには先住民に対する人権侵害の歴史がある。かつては、ヨーロッパから流れてきたならず者やアウトローが放浪する土地だった」と社説は述べている。
ガーディアン紙は、この社説は先週の安倍晋三首相の豪州訪問に合わせて出されたものだと記す。「オーストラリアと日本は軍事的な発展を分かち合う新たな防衛関係を結ぶことで合意した。この動きを中国は好ましくないと思ったのかもしれない」と、社説には日豪連携への牽制の意図も込められていると見ている。
【中国語版では「豪外相は完全なバカ」】
昨年就任したビショップ外相は、同国初の女性外相だ。そんな彼女に対する人格攻撃とも受け取れる記述も議論を呼んでいる。社説は「現在のオーストラリア政府は、外交においては特に経験不足」としたうえで、「それを差し引いても、外相の素朴さ(naivety)は中国の人々を驚かせた」と記す。この英語版の表現はまだ婉曲的で、中国語版では「完全なバカ」と書かれているという。(ワシントン・ポスト)
社説はさらに、ビショップ外相の「言葉による挑発」は、「外交官というよりも、我が国のネット空間でよく見られる要領を得ない『怒れる若者』を思わせる」と揶揄する。ワシントン・ポストは、こうした記述は「中国は弱きを尊重しない」という外相の批判を期せずして証明するものだと論じる。さらに、「共産党の代弁者と見られる同紙の反応を見れば、(中国は)批判や抵抗も尊重しないようだ」と皮肉っている。
社説は一方で、「中国人にとって、オーストラリアはビジネス、旅行、そして高い教育を受けるのに良い場所だ。我々は過度にビショップの言葉に怒る必要はない」などと余裕を見せる。また、勢力を拡大する中国がオーストラリア、日本などのアジア太平洋地域諸国の脅威になっていることを認めたうえで、日豪の協調やオーストラリアが西側諸国に同調することについては一定の理解を示す。しかし、それを差し引いても現在のオーストラリア政府の動きは、中国が主導権を握る新しい「アジア太平洋のステージにはそぐわない」とグギを刺している。