デフォルト危機のアルゼンチンVS“ハゲタカ集団” 債権国・日本への影響は?
2001-2002年に800億ドルの負債を抱えて債務不履行(デフォルト)を経験したアルゼンチンが、またデフォルトに陥る可能性が生まれている。現在のアルゼンチンの経済は非常に厳しい状況にある。
アルゼンチンのインフォバエ経済誌によると、2014年1月の同国の外貨準備金は僅かに279億ドルで、例えばブラジルの3754億ドルのほぼ7%分しか保持していないことになる。 昨年のインフレは28%を記録し、今年もこの数字に至る動きをみせているという。
【アルゼンチンが抱える負債】
5月29日の夜中にアルゼンチンはパリクラブと負債総額97億ドルを5年で返済するという内容の合意に至った。ドイツのD.W.紙は、債権国No.1はドイツで負債総額の30%を担い、No.2は日本の25%、さらにオランダ、スペイン、イタリア、米国、スイスがそれに続く、と報じている。
その一方で、米国の投資ファンドがアルゼンチンの前回のデフォルトで支払い不能となった債権の全額の返済を請求し続けて来たことに対し、米国ニューヨーク連邦地方裁は投資ファンドの請求を認め、6月末までに15億ドルの投資ファンドへの支払いを同国に命じたことは世界の各紙でニュースとなった。
【米国のハゲタカ集団との戦い】
この投資ファンドはアルゼンチンのクリスティーナ・フェルナンデス大統領が「ハゲタカ集団」と呼んでいる投資グループで、前回のデフォルトの後、2005年に債務の再編を行なった際に、93%の債権者は元本の減額に応じたにもかかわらず、このハゲタカ集団はその減額に応じなかったグループである。
アルゼンチンのラ・ガセタ紙は、紛争交渉専門家ポール・シンガー氏の「仮にこのグループの要求を受け入れると、元本の減額に応じた93%の債権者も同じように支払いを請求して来る可能性があり、その額は1200億ドルと推定されている。仮に、これに応じれば、アルゼンチンは支払い不能になる」との発言を伝えている。また同氏は「このグループが要求している額はアルゼンチンの負債総額の1%以下の額であり、支払いの可、不可の問題ではなく、根底は政治的な問題である」とも述べている。
アルゼンチン政府は元本の減額に応じた債権国のひとつ、日本には朝日新聞を通じて6月25日付の朝刊で「アルゼンチンは債務返済を継続したいが、継続させてもらえない」というタイトルで米国連邦裁の判決に抗議する内容の広告を出した。同じような内容は「ウォール・ストリート・ジャーナル」「ワシントン・ポスト」「ニューヨーク・タイムズ」やスペインでは「エル・パイス」、さらに英国やドイツなどのそれぞれ主要紙にも同様の内容が掲載されたと、ロシア・トゥデイ紙やロイターが報じている。
【ハゲタカ集団との交渉とアルゼンチンの行方】
アルゼンチンのABC誌は、今回の米国連邦地方裁に訴えていた投資グループはNMLキャピタルとオーリーリアスで、前者の場合はデフォルトのあと紙屑同然となっていたアルゼンチンの国債を4870万ドルで購入したものが、今回の判決で額面金額の8億3200万ドルを受け取ることになる、と報じている。またフェルナンデス大統領は「僅かの期間にこれだけの暴利をむさぼる犯罪組織は彼ら以外には存在しない」「彼らの悪徳姿勢に対しIMF、世銀そしてオバマ大統領も我々に味方してくれている」と述べたことも同誌が伝えている。同様に減額に応じた国々も投資グループの姿勢を強く批判しており、米州機構もメルコスールもアルゼンチン政府の姿勢に味方している。
現在アルゼンチンのキシロフ経済財務相の陣頭指揮のもとに政府高官と米国連邦地方裁が任命した代理人ダニエル・ポラック氏との間で交渉が続けられているが、今までの交渉には進展は見られていない。
【日本への影響】
しかし仮にデフォルト宣言しても、世界的にリーマンショックのような事態にはならない。何故なら、債務の再編以後も国債の発行が出来ない状態であるが故に、新たな債務危機は生まれない。よって金融面において日本への影響も殆どないと思われる。しかしアルゼンチン政府は平価の切り下げを行なうのは必至で、更にインフレが加速する可能性がある。その影響で短期的にはアルゼンチンの国内産業はさらに打撃を受け、消費もさらに落ち込む。よって、アルゼンチンに進出している日系企業にもマイナス影響が出ると思われる。
そしてアルゼンチンの主要輸出品目である穀物が値下げを避けて供給市場から一時的に姿を消し、日本のような輸入市場で不足が生じる可能性はある。しかし、これも短期間の出来事で、2002年のデフォルトの後に見せたように市場が落ち着くと、平価の切り下げから輸出価格に競争力がつき、輸出が回復して、それが経済の回復にプラス影響するというシナリオも想定出来る。
それを想定しているのか、2002年のデフォルトの後のアルゼンチン経済を担ったドミンゴ・カバリョ元経済相はイ・プロフェショナ経済誌の質問に答えて「彼らグループに長い猶予期間を設けて支払いをすべきである」と述べている。むしろ問題は、上述のポール・シンガー氏が述べているように、アルゼンチンが今回抱えている負債よりも更に巨額の負債を抱えている国が世界には存在しており、今回のような投資グループの暴挙が法的に認められていることに対し、世界レベルで解決せねばならない、としている。
外部サイト参考記事
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