黒田総裁、“物価上昇は予想以上”発言 なぜ海外紙一斉報道?緩和策の行方に注目集まる
23日、日銀の黒田総裁は衆議院の財務金融委員会で、2013年度の消費者物価指数に関して、次のように述べた。
「(日銀の従来の見通しである)0.7%より少し高めになっているのではないか。民間の見通しと現時点で違っているが、これまでのところ見通しに従って順調に道筋をたどっている。現時点では物価目標を安定的に継続するまで、今の金融緩和を継続するというのに尽きる」
【日銀の異次元緩和】
日銀は昨年4月以来、徹底した景気刺激策を断行、消費者物価を2%上昇させようと努力してきた、とロイターは述べる。
この景気刺激策は、量的・質的金融緩和ないし「異次元緩和」と呼ばれるもの。ブルームバーグによれば、日銀は1年間で50兆円の長期国債を市場から買い入れた。この結果、財政赤字は膨らんだが、15年来のデフレから世界第3位の日本経済を回復させようという安倍首相の賭けにも貢献したのだ。
これに対して、近々に2%の消費者物価上昇という目標を達成することはできず、7月頃に日銀は追加緩和を決断するだろうとの見方が市場では多数を占めていたとロイターは述べる。
【現状】
同日京都で行われた講演の中で、日銀の中曽副総裁は、日本経済が4月の消費税率引き上げの影響を吸収できるとの見解を示した。雇用・所得環境も改善され、見通しは明るいとの楽観的な観方であったとロイターは報じている。
今回の増税をきっかけに、企業は景気低迷期に見送ってきた価格転嫁の実施に踏み切った可能性が高いと海外メディアは見る。
黒田発言からすれば、日銀が来週発表予定の「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」で前回の物価見通しを上方修正するのではないかと各紙は分析している。
【今後】
冒頭で取り上げた衆院の財務金融委員会では、民主党の前原氏が、金利が上昇して国債費の負担が重くなったらどうするのか、と質問。
これに対して黒田氏は、「金融政策はあくまでも2%の物価安定目標を達成し、それを安定的に持続させることが目的」と述べた上で、「目的から離れて物価安定目標が達成されてしかもそれが安定的に持続しているのに、財政の国債費負担を下げるために金融政策を行うという考えは全く持っていない」と述べたという。
日銀はすでに、物価安定の目標である2%が達成された時点で現在の緩和策を終了する意向を示しているとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。
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