米国の慰安婦像が“日本人差別”招く 撤去求める提訴に、現地メディアは冷ややかな反応
アメリカ・カリフォルニア州グレンデール市に設置されている、いわゆる「慰安婦」像をめぐり、日韓の争いがアメリカを巻き込む形で激化している。
像は昨年7月、主に韓国系住民の要望を受けて建てられた。これに対し、在米日本人らの団体が21日、撤去を求めて同市を提訴した。
グレンデール市議会は25日、原告側と争う姿勢を明らかにしたという。現地情勢や報道を俯瞰すると、世論は原告側には厳しいものとなっているようだ。
【撤去を求め日系人らの団体が提訴】
慰安婦像は、ロサンゼルス郊外の住宅地、グレンデール市内の公園に建っている。民族衣装姿の韓国人少女の座像の横には、「私は日本軍の性奴隷でした」と刻まれたレリーフが設置されている。
撤去を求めているのは、グレンデール市在住の日系人と、ロサンゼルス周辺の日本人在住者でつくるNPO法人「歴史の真実を求める世界連合会(GAHT)」で、21日、米連邦地裁に訴状を提出した。
地元の『グレンデール・ニュースプレス』などが伝えるところによると、訴状は、韓国系住民の一方的な主張に基づき像を設置したことは、「グレンデール市の権限を逸脱しており、本来連邦政府に属すべき外交権限を侵害している」、「プレートの文言が市議会で承認されておらず、市議会の規定に違反する」などと主張。米連邦政府に対し、グレンデール市に撤去を命じるよう求めている。
【米メディアは日本側の主張も取り上げるが・・・】
『グレンデール・ニュースプレス』は、原告の一人の日系人女性が、法廷で、「像のせいで(設置されている)セントラル・パークを楽しむことができなくなった。(日本人と日系人が)排斥され、不快感と怒りにさいなまれている」などと提訴の理由を語ったと報じている。
一方タイム誌は、25日に東京の日本外国特派員協会で開かれた「グレンデール市の慰安婦像に抗議する地方議員団」の会見の内容を報じた。この中で、1月に訪米し、グレンデール市当局に抗議文を手渡した松浦芳子杉並区議が、次のように述べたと伝えた。
「嘘のプロパガンダのせいで、現地の日本人の子どもたちが韓国人からいじめを受けている。そのうちの何人かは、日本人であることを隠さなければならないと我々に訴えた。韓国の人たちは(慰安婦問題を)人権侵害として広めているが、それは新たな人種差別を招くだけだ」
同誌はこうした主張を取り上げつつも、「“慰安婦の罪”を押し戻そうとする一連のキャンペーンの一部」と、冷ややかにとらえる。
さらに、「日本人は今回の訴訟によって、この問題をアメリカの国内政治の問題にしようとしている。そのことにアメリカ政府は明らかに失望している」と、識者のコメントを掲載。「日本の保守層は“攻め”に転じたが、得るものよりも失うもの方が多いだろう」と論じている。
【グレンデール市は原告側と争う姿勢】
日本のメディアも現地の動きを追っている。産経新聞は、最新の動きとして、これまで態度を明確にしていなかった市議会が、原告と争う姿勢を鮮明にしたと報じている。市議らは公聴会で韓国系住民らの意見を聞いた後、「像は守られる」と口を揃えたという。
関連して、朝日新聞は『慰安婦像めぐり在米住民に溝』と題して、市議会で16人の市民が訴訟に異議を唱えるスピーチをしたと報じた。
記事によると、62歳の日系米国人男性が「訴訟は像が日米同盟を脅かすと主張するが、ホロコースト博物館がドイツの友好関係の妨げとなったり、アルメニア人虐殺の碑がトルコとの同盟を危うくしたりするだろうか」と疑問を投げかけたという。