米国、中国の“ASEAN分断策”に警告 領有権の平和的解決を後押し
ケリー米国務長官は17日、中国と東南アジア諸国の間で争われている南シナ海の島々の領有権問題について、「軍事的衝突が起きる可能性がある」などと警告した。中国に対して、東南アジア諸国連合(ASEAN)が提唱する南シナ海での「行動規範」の策定に合意することを求める姿勢だ。インドネシア・ジャカルタで記者団に語った。
【行動規範の策定を強く求める】
アジア・中東諸国歴訪中のケリー長官は、ASEANの動きをけん引するインドネシアのマルティ外相とともに現地で記者会見を開いた。
ワシントン・ポストなどの海外紙はこぞって「アジア太平洋地域の安定は、行動規範の策定にかかっていると言っても過言ではない」「そのプロセスに時間がかかればかかるほど誰かが判断ミスをする可能性が広がり、紛争のリスクが高まる」といったケリー長官の「警告」を報じた。
ASEANなどが提唱する行動規範は、南シナ海の島々の領有権を巡る対立の平和的解決に向けたルールとなるものだ。
ASEANと中国は、2002年に南シナ海での該当する海域での行動をお互いに事前告知することについては合意している。しかし、より突っ込んだルールとなる行動規範の策定は「それ以来ほとんど進んでいない」と、フィナンシャル・タイムズ紙は報じている。
ケリー長官は記者会見で、関係諸国に強く働きかけているマルティ外相の行動を高く評価。「すべての関係者は彼に従って交渉をスピードアップさせる努力をしてほしい」と語った。
【尖閣問題を含め中国を名指しで批判】
中国は、南シナ海の90%の海域で権益を主張し、ASEANに加盟するインドネシア、ブルネイ、マレーシア、フィリピン、ベトナムに台湾を加えた6ヶ国と領有権を争っている。
ケリー長官は、中国が、フィリピンと領有権を争うスカボロー礁に艦隊を派遣するなど、以前にも増して南シナ海での行動を先鋭化させていることを非難。また、日本に対して尖閣諸島の領有権を主張し、東シナ海に一方的に防空識別圏を設定したことも批判した。
ワシントン・ポスト紙は、ケリー長官のアジア歴訪の目的の一つは、中国のこうした行動を米政府が許さないということを、関係諸国との間で再確認するためだとしている。ケリー長官は会見で「私は2日前に北京を訪問し、東シナ海と南シナ海での行動についてアメリカの関心は高まっていると伝えたばかりだ」と述べた。
ケリー長官はまた、領有権の主張は国際法にのっとってなされるべきであり、第三者の仲裁を交えて平和的に解決しなければならないとも付け加えた。これに対し、中国は「当事者同士の二国間で解決したがっている」とワシントン・ポスト紙は指摘。同紙は、その方が「弱い国」をねじ伏せるのが容易だからだとみている。
【中国の狙いは石油・天然ガス資源か】
当事国の一つ、フィリピンの放送局ABS-CBNも、公式サイトにケリー長官の発言を伝えるロイター電を掲載した。
記事は、南シナ海での中国のおもな狙いは、莫大な埋蔵量が見込まれる石油と天然ガスにあると分析する。米エネルギー省は、この海域に280億バレルから最大2130億バレルの石油が眠っていると試算しているという。