移民の国オーストラリア、「厳格化」新戦略で狙う優秀な人材
ニュージーランドやアジアなどからの移民を多く受け入れてきたオーストラリア政府は今月、中長期的な計画を盛り込んだ新たな移民戦略を発表した。その詳細とは。
◆新移住者戦略の狙い
オーストラリア政府が先日公開した約100ページの文書にまとめられた新たな移民戦略(Migration Strategy)では、5つの目的と8つの行動計画が示されている。既存システムは「機能していない(broken)」と認めたうえでの新たな戦略計画だ。
5つの目的とは、生産性を上げ、スキル不足に対応し、輸出を支援することで、オーストラリア人の生活水準を向上させること▽移民労働者の搾取を防ぐとともに公平な就労環境を担保すること▽移民に対して永住権や市民権を通じてオーストラリアでの生活に投資する機会を与えることで、より強固なオーストラリア社会を構築すること▽外交関係の強化▽移民と雇用主にとってより迅速で効率的で公平なものとして制度を機能させることとある。
8つの具体的な行動計画の内容には、職能移民の受け入れに関するもの、留学のための英語力基準の引き上げや留学生の就労条件などを含む留学生受け入れに関するもの、移民労働者の搾取を防ぐための仕組みの改善や、いくつかの雇用ビザ制度の簡略化などが示されている。
この移民戦略には、パンデミック直後に反動的に急増した移民の数を、パンデミック前のレベルにまで戻すという狙いがある。パンデミック中、移民数(海外からの移住者純増(減)数)が第2次世界大戦後初めてマイナスを記録したが、国境再開に伴い多くの外国人がオーストラリアに一気に押し寄せた。一方で、オーストラリア政府の方針は必ずしも移民数をなるべく減らしていきたいということではなく、自国の経済の担い手となる優秀な若手人材を確保し、ヘルスケア、気候変動への対応(ネットゼロ社会への移行)そしてデジタル経済の発展といった主要領域の人材ニーズに対応したいという考えがある。
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