「知ってるものと違うから返金して」 タコ焼き店に寄せられたクレーム

画像はイメージ(Flicker/ Tobias Klüpfel

海外での日本食ブームはいまだ衰えていません。寿司やラーメンはもちろん、とんかつやうどん、どんぶり、居酒屋も定番になりつつあります。

【画像】カナダで販売しているタコ焼き

最近は、割烹など本格的な「和食」を提供する高級レストランも増えており、「おまかせコース」は、英語でもそのまま「OMAKASE」として大人気です。

そんな中、海外でも人気になり始めている日本食の1つがタコ焼き。

海外の人は一体どんな反応をしているのでしょうか。NewSphereはカナダ・トロントでタコ焼き店「Takoyaki6ix(タコヤキ・シックス)」を経営するカオリさんにお話を伺いました。

カナダでたこ焼き店を始めた理由

カオリさんが本格的に現地でお店を始めたのは2022年のこと。その前は、2019年頃からポップアップショップとして営業していました。

「カナダでのたこ焼きの認知度は高くなっている」と話すカオリさん。

お店のオープンを決めた転機はコロナ禍でした。自身がシングルマザーという自身の状況もあり、不安でいっぱいでしたが、前向きに挑戦してみることに。

「カナダの人は自分でビジネスをしようとする人が多いです。失敗を恐れずにやったもん勝ちという心意気なので、自分もカナダにいるからこそできたと思います」

とりあえず何でも挑戦してみるカナダ人の気質が、大きな後押しになったようです。

トロントでタコ焼きを販売しようと思ったきっかけについて、カオリさんは次のように話しました。

「15年くらい前にトロントでラーメン屋が初めてできた時、メニューの中にタコ焼きがあったんです。現地の人がとても興味津々で話題にしていたのを見て『もしタコ焼きを作っているところを見たら、どんな反応をするかな?』と思ったんです」

カナダ人にタコ焼きを受け入れてもらうまで

店頭でタコ焼きを作るスタイルは、パフォーマンス性があります。

タコ焼きの作り方を知らない人にとっては、丸い形はどう作るのか気になるかもしれません。

一般的なタコ焼きの特徴といえば、中身がトロっとしていること。

「中身がトロトロしているほど美味しい」とこだわりを持つ人もいるでしょう。

ですが開店当初、カオリさんは、あの独特な中身に対するネガティブな反応があったことを明かしました。

「最初、期間限定のポップアップショップをしていた頃は『よく焼けていないし、これは自分が食べたことのあるタコ焼きと違うから返金してほしい』と言われたことがありました」

当時カナダの居酒屋やラーメン店で出されているタコ焼きは、外がカリカリで、中見がわりと固まっている状態の、いわゆる「揚げタコ焼き」。

客からの意見を踏まえ、カオリさんはカナダ人に受け入れてもらえる生地作りを始めました。

さまざまなブランドの小麦粉を試し最適な配合のものを選んだり、タコの固さに気をつけたりしたのです。

当時カナダ人が食べ慣れていたのは、スペイン料理やメキシコ料理、ギリシャ料理などにある柔らかいタコでした。

「他国のタコ料理は、調理時間も長く、茹でた後にグリルすることが多いと思います。食感は、少し歯ごたえのあるカマボコといったところでしょうか」

そのため、多くのカナダ人は柔らかいタコを好んでいるようで、購入時にタコの固さを聞かれるといいます。

カオリさんは、カナダ人の好みに合わせて工夫していると話しました。

「タコの存在は感じられますが、日本のタコ焼きに入っているタコよりは柔らかくしています」

また、中身をあまりトロトロにしていないといいます。

2〜3か月の時間を要し、カナダで受け入れてもらえるタコ焼きレシピが完成したのです。

現在も「その日の温度によっても固まり具合が変わるため、日々微調整している」と工夫は欠かせません。

一方、タコを食べない人はまだいるとのこと。やはり独特な食感は好き嫌いが分かれるのでしょう。

そのためお店では、中身をガーリック・シュリンプに変えたエビ焼きも販売。

エビに加え、コーンやチーズも入っているため、タコに抵抗感がある人に評判だそうです。

他国の食文化に寛容なカナダでタコ焼きの売り上げ

カナダは移民が多い国。カナダ政府によると、2022年に同国が受け入れた移民の数は43万7000人でした。

街には、さまざまな国のレストランが存在し、多くの人は他国の食文化に積極的です。これもカナダでタコ焼きが人気な理由の一つなのかもしれません。

カオリさんは「客層の7割はアジア系です。お店を訪れる人の中には、タコ焼きを今まで一度も見たことも聞いたこともないカナダ人もいる」と説明しました。

また、お店はトロントの観光地の一つであるケンジントン・マーケットにあり、その立地から観光でトロントに来ている世界各国の人も購入するとか。

お店がタコ焼き以外のメニューも提供している中、タコ焼きだけで一日の売り上げは多いときで1000カナダドル(約11万円)あるそうです。

カナダからも、タコ焼きの美味しさは世界中に広がっています。

現地の人の好みに合わせながら、タコ焼きの魅力をカナダで伝えるカオリさん。

「カナダの冬は厳しいです。現在はテイクアウトのみの販売ですが、店内でも食べれるようにしたい」と、今後の目標を語りました。

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Text by 島田 そら