デジタルニュース外交:日本企業は米国経済にいかに貢献しているか

man-coffee-cup-pen

 トランプ大統領が日本のトヨタに対して、アメリカ国内に工場を増設するよう要求したことは記憶に新しいが、実際日本企業はアメリカ経済にどのくらい影響をもたらしているのだろうか。これに関して米デジタルニュースメディアの『クオーツ』が興味深い記事を書いている。記事は、直接投資と雇用創出に関するデータをまとめ、その両方の面で日本がアメリカ経済に大きく貢献していることを示している。

◆日本のアメリカ経済への貢献はどれほどか?
 記事によると、日本からアメリカへの海外直接投資は2002年から2015年にかけておよそ倍増しており、2015年には累積で4,110億ドルにのぼった。これはアメリカへの直接投資としてはイギリスに次いで第二位である。一方アメリカは日本にとって第一の直接投資国で、両国の経済は共存関係にある。

 また、日本企業は雇用創出においても大いに貢献している。約84万人ものアメリカ人が日本企業のもとで働いており、この数字もイギリスに次いで第二位である。このうち約46%は製造業に従事している。

 この雇用創出に、日本の自動車会社も寄与している。自動車会社とその関連事業が直接・間接的に生み出した雇用者は、2015年では150万人に及ぶ。これはアメリカで販売される日本車の75%が北アメリカで製造されていることと、日本の自動車会社が毎年679億ドルもの自動車部品をアメリカから購入していることが理由に挙げられる。

 2月には安倍首相とトランプ大統領の首脳会談があったが、安倍首相は日本が今後両国の経済関係を強化していくことを確認した。記事はトヨタ、ソフトバンクがアメリカへの投資をさらに増やしていくことについて触れ、日本の投資がアメリカ経済にとって不可欠であると繰り返し主張した。

◆新しいデジタルメディア、クオーツとは?
 実はこの記事、クオーツに掲載された日本政府によるスポンサードコンテンツ、つまり広告だ。クオーツは「グローバル経済のビジネスパーソンにむけたデジタルニュースメディア」である。2012年の創立以来、「広い国際視野を持った知的かつ創造的なジャーナリズム」をタブレットやモバイル向けに発信している。宣伝会議が運営する『AdverTimes』によると半数以上のアクセスがアメリカからで、次いでイギリス、インドの順となる。このデジタルメディアを通じて今回の記事を出した日本政府には、どのような意図があるのだろうか。

◆日本政府による広告の意図は?
 まず、日本政府がこの記事を出した背景には、トランプ大統領がトヨタを名指しで批判したことがあるだろう。今年1月、トランプ大統領は自身のツイッターでトヨタに対し、雇用増加のための工場をアメリカ国内に増設することを要求した。自国第一を掲げ外国企業や外国人労働者を敵対視するトランプ大統領への対論として、この記事は日本企業のアメリカ国内雇用への貢献を示す目的があるだろう。

 また、記事で強調されているのが、アメリカと日本は互いに重要な経済パートナーであるということだ。日本政府は、日本企業とアメリカ企業は競合ではなく、あくまで両国の経済のために協力し合う存在であると主張しているようだ。

 今回の記事は一見すると、日本企業のアメリカに対する直接投資と雇用創出のデータをまとめた記事に見える。しかしその実は、トランプ大統領への反論と日本政府の姿勢を示した政治的なメッセージが含まれているだろう。ツイッターで政治的発言を繰り返すトランプ大統領と、オンラインメディアで米国経済への貢献をアピールする日本政府。日米外交の駆け引きは今やデジタルの領域でも行われているようだ。このデジタルな外交を踏まえ、今後両国の経済関係はどのように発展していくのだろうか。

photo CC0 License

Text by 根本知宜