終わらない革命…サンダース氏、トランプ政権に対抗へ “間違った判断なら食い止める”

 民主党の大統領候補指名でヒラリー・クリントン氏と争い、一大旋風を巻き起こしたバーニー・サンダース氏が、著書「Our Revolution(我々の革命)」のプロモーションで全米各地を訪れ、大統領選と米政治の今後を熱く語っている。同氏は民主党敗北の理由、次期トランプ政権との関わり方を説き、市民の団結による革命の継続を訴えている。

◆選挙に負けても思想は広がる。大統領選の真の勝者
 フィラデルフィア・インクワイヤー紙(FI)は、サンダース氏こそが2016年大統領選の最大の勝者だと歴史に刻まれるかもしれない、と述べる。選挙には負けたが、思想の戦いには勝利したからだ。ぼさぼさ頭の75才の社会主義者が、世の中の不平等に立ち向かうとして大統領選への立候補を表明したのは1年半前。政治評論家から嘲笑されたが、企業献金や政治資金団体からの「汚い金」を拒絶し、支持者からの小口の献金だけを頼りに予想を覆す善戦をした、とFIはその活躍を振り返っている。

 マイアミのブックフェアに現れたサンダース氏は、トランプ氏が勝利したのは「エスタブリッシュメント(支配階級)への戦いを挑んだ」ためと述べた。仕事は長時間労働なのに低賃金、子育てにも十分なお金を回せず、貯金もないので老後が不安というミドルクラスがアメリカにはたくさんおり、苦しむ彼らに、政治、経済、メディアのエスタブリッシュメントすべてに対抗すると約束したトランプ氏のメッセージが、ポジティブに受け止められたと持論を展開した(米公共ラジオネットワーク、PBS)。

◆ヒラリー氏を批判。対トランプ氏なら勝っていた?
 大統領選、上下両院選に敗れた民主党に対しては、多様性について訴えかけることに重きを置いてアイデンティティ政治(特定のアイデンティティに基づくグループの利益を代弁して行う政治)に走ってしまい、労働者の声を聞くことを怠った、と苦言を呈した(Politico)。

 ボストンのプロモーション会場では、同氏は至上二人目の女性上院議員になりたいというラティーノ女性に対し、「必要とされているのはウォール街、保険会社、製薬会社、化石燃料産業などに戦いを挑むガッツのある女性」、「女性だから私に投票してでは不十分」と厳しいダメ出しをした(ボストン・マガジン)。政治サイト「Politico」はこの発言が、クリントン氏に対する遠慮のない非難であったとしている。

「クリントン氏ではなく、あなただったらトランプ氏に勝てたのでは」という問いにサンダース氏は、「その質問は4800万回は受けた」と冗談まじりに返答したが、長い選挙戦ではなにが起こるか分からないし、チャンスがあったのなら、ぜひトランプ氏と戦ってみたかったと述べた(PBS)。また、接戦州でクリントン氏が苦戦したのは、熱狂的なサンダース支持者がクリントン氏に投票することを拒否したからではないかという問いに対して、もともとアメリカの有権者の半分、特に若者、労働者、低所得者層が投票に行かない傾向があることに問題があり、彼らが投票に行っていたならクリントン氏の地滑り的勝利だったと分析した(FI)。

◆団結でトランプ氏に対抗。革命は続く
 サンダース氏は、トランプ政権誕生後の自身の役割についても言及している。同氏は各地で反トランプ抗議デモを行う人々の気持ちはわかるとしながらも、戦略が必要だとし、ゴールは何百万の人々を団結させ、数の力でトランプ政権に挑むことだと主張した。トランプ氏は選挙には勝ったが、最低賃金アップ、大学授業料無償化、気候変動といった問題においては、大多数のアメリカ人は自分の主張に賛同しているはずだと述べ、トランプ氏が間違った判断をするなら、人々の団結によってそれを食い止めようと訴えた。そしてトランプ氏が自分達の側に歩み寄って来るなら、政権とともに種々の問題を解決していけると説いた(PBS)。

 サンダース氏は、これからもプログレッシブな原則に基づき、主義主張を曲げないことにフォーカスしていくと述べている(Politico)。トランプ氏勝利で米政治は大きな転換期を迎えているが、サンダース革命の炎は、まだまだ消えそうにない。

Text by 山川 真智子