なぜフランスがテロの標的になっているのか? 現在も残る植民地主義の影響

 イスラム国(IS)と関連すると思われるテロ事件が相次ぐなかで「ヨーロッパが危険」というイメージが強まっている。ヨーロッパのなかでも特にテロの標的にされているのはフランスだが、その理由を理解するためにはフランスの歴史を遡る必要がある。一般にテロ事件の原因は「移民・難民問題」にあると思われがちであるが、植民地主義の過去、またフランス政府が依然として強調している単一文化主義に根本の原因があるとの指摘がある。

◆フランスにおける植民地時代の影響
 英紙ガーディアンや米誌TIMEが指摘しているように、フランスにおけるテロ事件を分析する際に、フランスの植民地主義時代を思い出す必要がある。ドイツや英国などもイスラム教の国からの移民が多いが、トルコやアジアの国々にルーツを持つ人がほとんどである。それに対して、フランスに住むイスラム教徒は、フランスの植民地であったアラブ諸国からやって来た人及びその家族が多くを占めている。

 1962年まで続いたアルジェリア戦争(フランスの支配に対するアルジェリアの独立戦争)は決して遠い昔のことではなく、フランスの植民地主義は今日でも非常に近い過去として認識されている。当時戦いで命を落としたフランス人の子孫はいまだにアルジェリアに対して複雑な気持ちを抱いている。一方、北アフリカからフランスに移民した人々の子どもたちもフランスで生まれ育ったにもかかわらず「フランス人」のアイデンティティを持つことができず、意識的にあるいは無意識的に親や祖父母の戦いを繰り返そうとしている、とフランスの歴史家が指摘している。

◆「フランスのアイデンティティ」と単一文化主義
 では、なぜフランス生まれ育ちの移民の子どもたちが「フランス人」としてのアイデンティティを手に入れることができないであろうか?

 2015年の「シャルリー・エブド襲撃事件」の後に、米誌TIMEが指摘していたように、19世紀末以降、教育制度におけるキリスト教の力を制限するためにフランス政府は宗教から距離をとり、世俗主義を強調する政策を行ってきた。それらの政策はキリスト教のみならず、すべての宗教に対して実施された。その結果、多文化社会を作ろうとしている英国やドイツと違い、フランスでは単一文化主義が強調され、フランス国民の一部であるイスラム教の人々が抑圧され続けたのだ。

 また、マリーヌ・ル・ペンを党首にする政党、国民戦線は、反ユダヤ的発言を控えているものの、依然として移民排斥を掲げており、とりわけフランスのアイデンティティがイスラム教の文化によって脅かされているということを主張し続けている。

◆多文化社会を目指すべきではないか?
 今日ヨーロッパが直面している難民危機において、その多さ自体が問題であることは否定できない。しかし、フランスにおけるテロ事件と移民・難民の「数」との因果関係ばかり強調され過ぎると、問題が単純化され、その核心が見えなくなってしまう恐れがある。フランスをはじめ、植民地主義の過去を持っている国々は、単一文化主義を強調する政策ではなく、多文化社会を目指すべきではないだろうか。

Text by グアリーニ・レティツィア