タバコの包装を「世界一醜い色」で統一、豪に続き英も 全体的に健康被害の警告、装飾禁止

 イギリスで、タバコのパッケージのデザインに明るい色の使用が禁止され、世界で最も醜いとされる色で統一されることが決まった。色で喫煙欲を減退させ、健康被害を減らそうという試みだが、果たして思い通りにいくのか?その効果が注目されている。

◆喫煙人口1000万人。英政府が対策に取り組む
 世界で最も醜い色というなんとも不名誉なお墨付きをもらったのは、パントン448Cという緑がかった茶色だ。CNNによれば、マーケティングリサーチ会社、GfKブルームーン社が、オーストラリアの喫煙者を対象に調査したところ、最もさえない色として選ばれ、「汚い」、「やに」、「死」という言葉と関連付けられたという。

 BBCによれば、イギリスの喫煙人口は1000万人と言われ、喫煙による死者は、毎年10万人と推定されている。タバコを吸いたくなる魅力的なパッケージングを排除するため、デザインを統一する法案が可決されたが、大手タバコ会社4社が反発し訴訟となっていた。しかしロンドンの高等法院が異議申し立てを棄却したことから、今後すべてのタバコの箱の色を448Cに統一することが決定。さらにパッケージの60%を健康被害の警告に使うこと、会社ロゴ使用の禁止、商品名とブランド名を全社共通フォントで表記という厳しい規制が実現することとなった。すでにオーストラリアでは、数年前から同様の規制が行われている。

◆色の効果、期待されるも感じ方は人それぞれ?
 カラー・コンサルタントのアンジェラ・ライト氏は、1960年代にデパートの従業員が長いトイレ休憩を取るのを防ぐため、448Cと似た色をトイレで使用し、効果が認められたというエピソードをCNNで紹介。448Cが嫌われるのは、人間の排せつ物を想像させるからではないかと述べる。

 実際のところ、色の感じ方を利用した宣伝、マーケティングは、広く行われている。ライト氏とロンドン・カレッジ・オブ・ファッションの心理学者、キャロリン・メア博士によれば、青は「集中、忠実さ、穏やかさ」を連想させる色で、銀行や法律関係のビジネスにしばしば利用されるという。赤は「力、エネルギー、情熱」を連想させ、赤いユニフォームのフットボールチームは、色から肉体的なエネルギーを得て、対戦相手にもパワフルで強いというメッセージを送ることができると説明している。黄色は「エゴ、楽観主義、解放的」を、緑は「バランス、若さ、エコ」、紫は「豪華さ、女性らしさ、あでやかさ」を連想させるということだ(CNN)。

 しかし、すべての人が同じように感じるわけではない。例えば赤は、アグレッシブで要求が多い、または陽気、エキサイティングと見られることもあるし、青は落ち着いて思慮深いと取られることもあれば、過剰に官僚的、感情がないと取られる場合もあるらしい。事実、ライト氏の448Cに対するネガティブな印象に対し、メア氏はこの色を「土のようで落ち着いたリッチな色。とても自然」とし、個人的には好きな色だと述べている(CNN)。

◆喫煙者には効果薄?タバコを知らない世代に期待
 さて、実際の喫煙者は、448Cをどう感じるのだろう。ウェブ誌『Vice』は、ロンドンのスモーカー6人に448Cを見せ、その感想を求めるという街頭インタビューを行った。

 色から連想するものは、「排水管のぬめり。自宅の裏のあふれた排水溝を思い出す」、「泥とか、ヘドロ」、「藻」、「うんこ。ちょっと悲惨な感じの色」と、全くポジティブなものはなかったが、タバコの箱がこの色であれば、買いたくなくなるかという質問に対し、やめる理由になると答えた人は一人としていなかった。「吸いたくなれば、結局吸う」、「パッケージと禁煙は関係ない」、「禁煙の必要性は分かっちゃいるけど、やめられない」と、いずれも冷めた回答だった。また、回答者のほとんどが10代から喫煙を始めており、友達の影響が強かったとしている。

 BBCによれば、イギリスの11歳から15歳までの子供では、1日あたり600人が新たに喫煙を始め、年換算すれば20万人にもなるということだ。『Vice』のインタビューから判断すれば、世界一醜い色の効果は喫煙者には薄そうだが、そのネガティブなイメージがまだタバコを知らない若い世代を喫煙から遠ざけることに期待したい。

Text by 山川 真智子