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ロシアが北方領土を絶対に手放さない理由 「要塞」内へのアメリカの侵入は断固阻止

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ロシアが北方領土を絶対に手放さない理由 「要塞」内へのアメリカの侵入は断固阻止

 安倍首相は1~7日の日程でヨーロッパ、ロシアを歴訪中だ。イタリア、フランス、ベルギー、ドイツ、イギリス、ロシアと回り、各国首脳と会談する。6日のロシア・プーチン大統領との会談では、日ロ間の長年の課題、平和条約締結について意見交換する予定だ。日本政府は、北方領土が日本に帰属することを両者で確認した上で、平和条約締結に臨むという方針だ。しかしロシア側は、第2次世界大戦の結果として当時のソ連が得たもので、あくまで自国に帰属するという立場だ。両者の隔たりは大きい。さらに、ロシアには、どうしても北方四島を手放せない理由もある。

◆平和条約、北方領土問題で日本にくぎを刺すロシア
 4月にはロシアのラブロフ外相が訪日、外相会談を行い、今回の首脳会談に向けた地ならしを行った。だがその直前には、ロシア外務省が「日本が戦後の歴史的現実を承認しないかぎり、平和条約問題の進展はあり得ない」と声明で改めて強調していた。「ロシア・ビヨンド・ザ・ヘッドラインズ」(RBTH、日本語版は「ロシアNOW」)が伝えた。RBTHはロシア政府発行「ロシア新聞」が出資しており、政府系メディアと呼べる。

 RBTHは、日ロ間に平和条約が結ばれていないことが、両国のパートナーシップの発展の障害になっているとする。そして、ロシア政府には条約を結ぶ準備があるが、日本政府は北方領土問題の解決を条件としている、との旨を語っている。

 両国のパートナーシップの強化によって得られるメリットについて、RBTHは以下のように語っている。ロシアからは日本に、エネルギー、資源、大市場を提供できる。そして最重要点として、ロシア政府は、地域での中国政府の影響力増大を相殺するための政治的支持も日本政府に提供可能だ、としている。

 日本からロシアへは、技術、産業ノウハウ、投資、イノベーションを提供でき、さらにロシア極東地域の経済発展に積極的に参与することができる、としている。

◆ロシアメディアから見ればこの程度でも日本にとっての「ウィン」?
 RBTHは、平和条約が日ロそれぞれに与えるメリットについて、日本政府にはロシア政府以上に得るところがありそうだと述べている。日本がロシアに対し、中国へのけん制を手伝ってほしいと思っているほどには、ロシアは日本の投資を必要としていない、とRBTHは断言している。RBTHは不均衡を強調することで、もし平和条約を結びたいのなら、日本がより多く譲歩すべきだということをにおわせているのかもしれない。

 日ロの懸隔を念頭に、RBTHは、両者は安倍首相の訪ロ時に一致点を求めるようである、と語っている。だがこの点についても、RBTHは日本にとって辛口な見方をしている。

「ロシアが南クリル諸島(北方領土のロシア呼称)問題に関してできる、唯一の予測可能な譲歩は、ロシアがそれらの島の主権を維持したまま、日本企業に、それらの島への特別なアクセスを認めることだ」とRBTHは語っている。日本の投資者のために、税制などのインセンティブを備えた経済特区が作られる可能性がある、としている。

 RBTHは、これは両者にとってウィン・ウィンの状況となるだろう、と主張している。安倍首相は、日本国民がそれらの島へのアクセス(利用機会)を得たと主張することができ、一方ロシアは日本の投資者から利益を得るからだというのだ。

 日本側からすれば、これは到底「ウィン・ウィン」などとは呼べないが、その程度の譲歩でも、日本にとっては十分に「ウィン」だとするRBTHの認識がうかがえる。

◆ロシアが北方四島をどうしても手放せない理由
 米外交専門誌ナショナル・インタレスト(NI)では、コラムニストのミナ・ポールマン氏と、米・東西研究所の東アジア問題フェローのバークシャー・ミラー氏が、ロシアにとって北方四島の軍事的価値が非常に大きいことを解説している。

 両氏は、(北方四島を含む)クリル諸島は、エネルギー、資源面での価値をしばしば称揚されるが、戦略的にも非常に重要であり、その尺度からすると、日本にとってより、ロシアにとっての価値のほうが大きい、と語っている。(クリル諸島は千島列島とも呼ばれるが、日本政府は北方四島を千島列島に含めない立場であり、混乱を避けるため本稿ではクリル諸島と呼ぶ。)

 両氏は、クリル諸島にはロシアにとって軍事的および戦略的価値があると指摘する。1つには、ロシアがクリル諸島を支配していることによって、ロシア海軍が太平洋に自由にアクセスできるということだ。このアクセスの確保が、スターリンが終戦時に南クリル諸島(北方四島のロシア呼称)の併合を決断する際の重要な動機だった、と両氏は語っている。

 ロシア国営ラジオ局「ロシアの声」ウェブサイトも、アメリカの戦略パートナーとなっている日本の主権下に島々が移管された場合、ロシアの太平洋艦隊はオホーツク海に閉じ込められ、太平洋への出口を失う、と語っている。特に冬季には、凍らないのは択捉水道と国後水道だけのため、封鎖は容易に可能だ、としている。

◆日本との関係強化よりも潜水艦のほうが大事?
 またNIの両氏によると、ロシアは核抑止力を維持するため、オホーツク海に弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)を控えさせる戦略を取っており、それらの防衛のためにも北方四島を抑えていることが重要なのだという。

 ロシアはこの核戦略を1970年代から取っているとされている。オホーツク海などを「海洋要塞」としてSSBNを配備し、そこからアメリカににらみを利かせる戦略である。公海に配備することを避けたのは、当時のロシアのSSBNは静音性が高くなく、アメリカの潜水艦に発見される可能性が高かったためのようである。その点、オホーツク海の「要塞」内であれば、自らの庭として、攻撃潜水艦などを用いて米潜水艦から防衛することがたやすい。

 だがそれも、北方四島を支配していればこそである。もしここが日本に返還されれば、同盟国アメリカの潜水艦、空母が国後水道を通ってオホーツク海に進入できるようになっていただろう、と両氏は語る。そして、ソ連に不利な方向に、力の均衡が劇的に変化していたことだろう、と語っている。

 これらの2点から、両氏は、クリル諸島をめぐる日ロの対立を、政治家、ナショナリストのポーズ取り(アピール)と片づけることは簡単だが、少なくともロシアの観点からは、明白な安全保障上の利益がそこにはかかっている、と語り、ロシアに譲歩するつもりがあるとは、非常に疑わしい、と結論している。

 なお両氏は言及していないが、歯舞群島、色丹島の2島返還であれば、国後水道の通航には影響がないとの見方もある(日本国際問題研究所・小谷哲男主任研究員)。

(田所秀徳)

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