12歳にして将来の青写真を描くオランダの子どもたち 学力に応じて進む3つのコース

「〇〇君は、政治に詳しいんだよ。〇〇代議士が提案する今の政策には、疑問を持っているんだ。将来、彼は政治家を目指してるから、〇〇大学で勉強するんだって」
「〇〇ちゃんは、読解力が抜群で算数の成績は中学生レベル。飛び級しているから、あと2~3年で〇〇大学へ行く予定なんだって」

 今の時期、このような会話が小学8年生(日本の小学6年生に相当)たちの間でさかんに交わされている。それにしても、将来のこととは?大学とは?小学6年生といえば、まだ12歳だ。にもかかわらず、彼らは己の未来の青写真を描き、クラスメートの将来を具体的に示唆できるようなのだ。

◆将来を決める「共通テスト」
 小学校卒業時で、「将来」が決まってしまう教育制度とは一体、どんなものなのか。親を含め、教育者からも賛否両論なのではないだろうか。答えは「Nee(蘭後で、いいえ)」だ。

 オランダの子どもたちは、小学1年生(日本では幼稚園の年少組)の頃から、8年生までの8年間、年に2回ずつ文部省認定の共通テストをうける。これは、LVS-Cito(Leerling Volg Systeem)と呼ばれ、算数(計算)と国語(スペリングと読解)の2科目のみのテストで、各生徒のテストの結果はコンピューターによって分析後、記録に残される。

 小学7年生(日本の小学5年生)の学期末を迎えると、このテストの記録を基にした「将来のアドバイス」が各担任から通達される。これは「プレ通達」と呼ばれ、各生徒の成績の伸びを担任が分析し、将来はどのような方向に進むべきかを親と子どもに簡単にアドバイスする目的を持つ。

 そして、小学8年生になると最終的な通達がなされる。将来を確実に見極めさせるため、上記の共通テスト結果を基にして学力別に3つのカテゴリーに振り分けられるのだ。これは端的にいえば、学力差に応じ、各生徒に最も適した学習コースへ導くことを意味する。

 成績優秀な生徒は大学進学準備コース(6年制)へ、平均的な生徒は高等学校コース(5年制)そして、勉強があまり得意ではない子は4年制のいわば職業学校に通うことになる。(実際の割合としては、大学進学コースへ行く子どもは全体の20%、高等学校が20%、職業学校が60%である)そして、このアドバイスに従い、子どもたちは自ら選んだ中学校へ願書を提出し、入学許可を待つことになる。

 上記アドバイスに従ったものの、中学校に通い出したら急に学力が伸び、大学進学準備コースを目指し勉学に励むようになる子どももなかにはいるため、中学最初の2年間で好成績を残せば、3年目からコースを変更することも可能で、その点はフレキシブルである。

 しかし、ベテラン教師にいわせると、小学校卒業時の通達内容は「99%間違いがない」という。つまり12歳で「将来は、ほぼ決まっている」というわけだ。各個人の学力に差はあれど、子どもが先天的に持つ能力は、すでに小学校卒業時で明確化されている、ということなのだろう。

◆自分の能力の限界を知っている子どもたち
 では、この「3つのカテゴリー分け」に賛否両論はないのだろうか。結果からいえば、ないといえるだろう。小学校時代を通じて成績が良く、大学進学準備コース確実と誰もが信じて疑わなかった子どもが、高校進学コースへと通達されたときなどは、親の絶望感は並大抵なものではなく、しばしば担任や学校に怒りの矛先が向けられるようなこともある。しかし、これとて通達結果に憤りを感じているだけで、この「3つのカテゴリー分け」を不当としているわけではない。つまり、12歳で将来をほぼ決定してしまうこのシステムに関し、親からも、教育者からも否定する動きはまるで見られないことになる。

 それでは、当の子どもたちは、小学校の成績如何で将来が決められてしまうことをどう考えているのだろうか。不甲斐ない、と反発を覚える子どももきっといるに違いない、と思いきや、驚くことにほとんどの子どもたちは、自らの能力の限界を悟っているふしがあるのだ。たとえば、「大学進学コースに行けなくて、悔しい」とか、「中学になったら、ぜったいにもう1ランク上げてやる!」といった声がまったく聞かれず、「これが僕の能力だから」、「私は勉強に不向きだとわかっているから、むしろ、早く働きたい」と、己が置かれている状況を受け入れており、あくまでも冷静なのである。

 話を聞いた子どもたちの中に、どうしてもパイロットになりたい!という夢を持っている少年がいた。彼は現在、願書を提出した中学からの入学許可を心待ちにしている。夢はジャンボ機のパイロットだ。しかし、それが無理なことを彼は知っている。「高校進学コースから、残念ながら外れちゃったから」と、悲しそうだ。ジャンボ機のパイロットになるには、まず高校進学コースの権利を得る必要があるからだという。「でも、パイロットになる夢は捨てていないんだ!僕の能力でも、雇ってくれるところがきっとあるはずだから」と笑う彼。12歳で、夢の実現に向けファイトを燃やすその決意に、惜しみない拍手を送りたくなった。

Text by カオル イナバ