“小競り合いはやめてトランプを叩け” トランプ氏独走に現地メディア危機感、阻止法を提案

 23日に行われた共和党のネバダ州党員集会で、ドナルド・トランプ氏が2位以下に大差をつけ、ニューハンプシャー、サウスカロライナに続き勝利した。当初は「トンデモ候補」として軽視されていた同氏の3連勝で、共和党内ではトランプ氏指名が現実味を帯びてきた。一方、現状を憂ういくつかの現地メディアは、トランプ封じ込め策を論じている。

◆いまやトランプ氏指名も想定
 ロサンゼルス・タイムズ紙(LAT)は、共和党の主流派はいまだにトランプ氏が大統領になることには否定的だが、今や同氏が無視できない存在であり、結局最後は何とかなるという主張も引っ込めてしまった、と述べる。元上院議員のトレント・ロット氏は、古参の共和党員の間でも、トランプ氏の指名獲得はあり得るという認識になっており、もし現実になれば、容易ではないがトランプ氏と主流派との戦闘的な関係は終わり、支持に回ることになるだろうと話した。

 共和党下院議員のダンカン・ハンター氏のように、早々とトランプ氏支持を表明する者も現れたが、できるだけ長く抵抗した後、どうやって上品に退却するかを考えるというのが、反トランプ勢力の当面の戦略のようだとLATは指摘。共和党のリーダー、資金援助者も、代議員の「勝者総取り」州で規模の大きいフロリダやオハイオなどの戦いが終わる3月半ばまでは、様子見をするだろうと述べている。

◆どうすれば止まる?トランプ氏の独走
 トランプ氏の独り勝ちに懸念を示すメディアは、打倒トランプの方策を提示している。

 ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、まず高額献金者を動かすことだと主張。彼らは個々の候補者に多額の資金を提供しているが、これまで反トランプ・グループに数百万ドルの献金をしたのはシカゴ・ブルズのオーナーでもある富豪のリケット一族のみで、他の富豪を動かしてネガティブ・キャンペーンをすれば、トランプ氏にとって深刻な脅威になると述べている。しかしウェブ誌『Slate』のジム・ニューウェル氏によれば、逆にトランプ氏からの攻撃の対象となることもあるため、大口献金者はネガ・キャン協力に消極的らしい。

 候補者のふるい落としも求められる。NYTは、現在トランプ氏以外に残る候補は4人だが、トランプ氏は過半数以下の得票で、レースを有利に進めていると指摘。しかし、同氏のライバルが1、2名にまで絞られれば、支持を広げるのは今までよりも難しくなると述べる。この点については、ネット・メディアの『FiveThirtyEight』も指摘しており、ルビオ氏に反トランプ票を集めることが大切だとしている。ブルーカラー層の支持を集めるトランプ氏に対し、ルビオ氏が狙うべきは、ホワイトカラー、大卒の割合が高い『勝者総取り』州であり、民主党支持者が多いのに代議員数が多い選挙区を押さえて行くこともポイントのようだ。NYTは、もしもトランプ氏有利とされている「勝者総取り」州で波乱が起きれば、少なくともトランプ氏が指名に必要な半数以上の代議員を獲得する可能性はなくなるだろうと述べている。

 さらにNYTは、その規律の欠如から、トランプ氏は今後大きなつけを払わされることになるかもしれないとも指摘する。これまで共和党指導部は、節度がない、無能だとしてトランプ氏が自滅することを期待してきたが思い通りにはならず、自滅があるとすれば、共和党指名獲得前なのか、それとも11月の本選なのかということに関心を寄せているという。

◆必要なのは、対立候補の真っ向勝負
『Slate』のニューウェル氏は、ルビオ氏、クルーズ氏、ケーシック氏が互いを否定し合うばかりで、トップランナーであるトランプ氏に攻撃を挑まないことにいら立っている。同氏とNYTのいずれも、次のヒューストンでの討論会で、対立候補たちがしっかりとトランプ氏を叩いておく必要性を指摘。特にニューウェル氏は、トランプ氏以外の候補がフルに2時間集中してトランプ氏を攻撃すれば、減りつつある反トランプ派の希望につながるが、これまで通りルビオ氏とクルーズ氏が小競り合いをし、トランプ氏を演壇でくつろがせるような事態になれば、共和党主流派の支持もトランプ氏に傾くだろうと警告している。

Text by 山川 真智子