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中国が西沙にミサイル配備した意図とは?海外専門家の見解 エスカレートする米中の攻防

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中国が西沙にミサイル配備した意図とは?海外専門家の見解 エスカレートする米中の攻防

 南シナ海のパラセル(西沙)諸島のウッディー(永興)島に、中国が地対空ミサイルを配備していたことが分かった。「なぜこのタイミングなのか」「なぜパラセル諸島なのか」など、この問題にはいくつかの「なぜ」がある。海外の専門家はこれをどのように考えているのだろうか。

◆アメリカの「航行の自由作戦」がきっかけか
 南シナ海の北西寄り、中国の海南島やベトナムの沖合に位置するパラセル諸島は、中国、ベトナム、台湾が領有権を主張しているが、1974年以来、中国が全島を実効支配している。ウッディー島はパラセル諸島最大の島だ。中国は埋め立てによって島を拡張し、島の両側にはみ出す格好で3000メートル級の軍用滑走路を設置している。島には軍の駐屯地や行政施設がある。戦闘機が配備されていると語る専門家もおり、軍事拠点化はすでに相当進んでいた。

 それではなぜ今この時期に中国はミサイル部隊を配備したのか。このニュースをスクープしたFOXニュースによると、衛星画像から判断して、今月3日から14日の間に配備されたとのことだ。

 配備のきっかけになったと多数のメディアで指摘されているのは、アメリカが南シナ海で行っている「航行の自由作戦」だ。今年1月に実施された際は、パラセル諸島周辺が舞台だった。

◆「航行の自由作戦」を口実に軍備を拡充?
 これには二つの側面があると考えられている。一つは、アメリカなど各国に対して、中国は「自国の領土」を防衛する決意と力がある、と示すための対抗措置だというもの。もう一つは、軍備拡充を正当化する理由として、アメリカの動きを利用している、というものだ。

 シンガポールの東南アジア研究所のシニアフェロー、イアン・ストーリー氏は、中国はここ数年間、パラセル諸島で軍事施設を建造し続けている、とワシントン・ポスト紙(WP)で指摘する。そして、報じられている中国の今回の動きが、米軍が実施した作戦への直接的な対抗措置かどうかははっきりしないが、中国政府は「南シナ海でのアメリカの軍事的措置への対抗措置」という名目で、ミサイル配備を正当化しようとおそらく試みるだろう、と語っている。

 軍事情報誌「IHSジェーンズ・インテリジェンス・レビュー」のニール・アッシュダウン副編集長も、ドイツの国際公共放送ドイチェ・ベレ(DW)のインタビューで、両側面について語っている。今回の配備は、アメリカと南シナ海で主権を主張する他の国に対して、中国には自分たちの領有権主張を守り抜く能力がある、というメッセージを送ることをおそらく意図したものだと氏は語る。

 また、今年6月には、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が、南シナ海での中国の領有権主張に関する判断を下すとみられているが、中国はそれに先立って南シナ海での既成事実の積み上げを行った、というのが氏の読みだ。

 二つ目の側面に関しても、今回の配備は、静かに着々と南シナ海で軍備を整えるという中国の戦略にのっとったものだと氏は指摘している。中国はこの戦略に従い、より有効な軍事システムをより多く各島に配備するのを正当化するため、他の権利主張国とアメリカの外交・軍事活動を利用している、と氏は語る。

◆まだ実戦配備ではなく、反応をうかがうための「見せミサイル」の可能性も
 今回の配備はまだ実戦配備ではなく、演習用で、いわば「見せミサイル」の可能性があると指摘する専門家もいる。豪ローウィ国際政策研究所の国際安全保障プログラムのディレクターのユアン・グラハム氏は、衛星画像では、部隊の活動を支援する軍事施設が写っていないように見えるため、運用中ではない可能性が示唆される、とインターナショナル・ニューヨーク・タイムズ紙(INYT)で語っている。

 配備は一時的なものであり、中国は、南シナ海問題の交渉で有利な立場を得ようとしているだけで、同時にアメリカや、オーストラリアなど各国の反応を見定めようと試みているのかもしれない、と氏は語る。「ミサイル配備には軍事的要素があるかもしれないが、シグナル発信という要素もある」と語っている。

◆中国は本当は何を防衛しようとしているのか
 中国の王毅外相が、「中国の人員が駐留する島や礁に、中国が限定的かつ必要な自衛施設を構築することは、国際法上、いかなる主権国家にも認められている自衛権に完全にのっとったものだ」と語っているように、中国は今回の配備に関しても、国防目的であることを強く主張している。

 中国外交部の洪磊報道官は17日の定例記者会見で、ウッディー島のミサイル配備に関して具体的な状況は承知していないとしつつ、中国が自国領土の防衛を強化するのは「全く正当なもので道理にかなっている」「いわゆる軍事化とは何ら関係がない」と語ったとINYTは伝えている。

 中国がミサイル配備によって防衛しようとしている「自国領土」とは、一次的にはパラセル諸島だろう。しかしそれだけではないようだ。それが「なぜパラセル諸島か」という疑問の答えとなる。

 南京大学中国南海協同創新センターの朱鋒主任が、WSJとINYTで語っているところによると、ウッディー島へのミサイル配備は、近辺の中国の軍事施設の防衛力を高めるための当然の措置であるという。その軍事施設とは、海南島・三亜市の中国海軍基地である。氏によると、この基地は潜水艦の根拠地となっており、ゆくゆくは空母の母港になるとみられているという(報道によれば、昨年、約700メートルのふ頭が完成した)。「三亜市は中国海軍の本拠地になりつつある」と同氏は語っている。

 CSISのアジア問題のシニアアドバイザー、ボニー・グレイザー氏は、中国は今回の配備をしばらく前から計画していたふしがある、とWSJで語っている。

 東南アジア研究所のストーリー氏は、今回のミサイル配備は、中国が南シナ海北部に、ある種の防空識別圏(ADIZ)をついに宣言することの前兆になるかもしれない、とWPで語っている。そしてゆくゆくは、スプラトリー諸島の軍事施設が増強されれば、はるか南方まで拡張されるかもしれない、と語っている。

◆米中の火花の散らし合いはやみそうにない
 今後の見通しについて、IHSジェーンズのアッシュダウン氏は、今回の配備がもし確認されれば、中国が南シナ海での領有権主張で、今年は昨年以上に強硬な姿勢を取るつもりだというしるしになる、と語っている。それによって地域の外交は難しくなるだろう、と語っている。

 WSJは、米中間の緊張の高まりに焦点を当てて報じている。両者ともあからさまな対立を望んでいないが、互いの姿勢が固定化しているために、外交解決の選択肢は狭まりつつあり、危険な事態が勃発する可能性が高まっている、と語る。

 WPによると、オバマ大統領は米・ASEAN首脳会議後の16日の記者会見で、アメリカは南シナ海での「航行の自由作戦」を引き続き実施すると約束した。一方、中国当局者は南シナ海の防衛能力を今後も強化し続けると語っており(WSJ)、米中どちらも簡単に引き下がりそうにない。

 オーストラリア国立大学のアジア太平洋安全保障問題のローリ-・メドカフ教授は、「戦略的なシグナル発信の応酬が悪化することのリスクは、大いに注意する必要がある。特に、計算違いの可能性について」とWSJで語っている。

(田所秀徳)

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