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なぜヒトラーの禁書「わが闘争」は再出版されたのか? “極右が台頭する今こそ…”

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なぜヒトラーの禁書「わが闘争」は再出版されたのか? “極右が台頭する今こそ…”

 長らくドイツで禁書扱いだったヒトラーの『わが闘争』が、1月8日に再出版された。移民流入で外国人排斥が問題となるドイツで、ナチスの独裁者のマニフェストが再び日の目を浴びるのか?海外メディアが再出版の経緯と意義を報じている。

◆今年、著作権が切れていた
『わが闘争』が最初に出版されたのは、1925年。第二次大戦に突き進んだヒトラーが実践した、近隣国の併合とユダヤ人の迫害という2つの考えが提示されており、1945年までにドイツで約1240万部が出版された(AFP)。

 戦後、同書の著作権は、ナチス誕生の地であるバイエルン州の州政府に譲り渡された。州は以来、地元の評判を傷つけたヒットラーの著書の再出版を許すことはなかったが、欧州では著作権は著者の死後70年までしか保護されないため、今年1月1日に著作権切れを迎えることとなった。

◆新版は学者による注釈付き
 ネオナチが自分達の目的のため、『わが闘争』を再出版することを予期したバイエルン州政府は、2012年にユダヤ人とロマ(欧州で迫害を受けた少数民族)の代表を呼び、著作権が切れた際の対策を協議。ヒトラーの文章を分析した、注釈入りの学術版『わが闘争』を州政府の資金で製作することに合意し、ミュンヘンの「現代史研究所(IFZ)」がその作業を担った。途中、イスラエルの被害者グループからの抗議を受け、州政府が資金提供を撤回するなどの事件もあったが、3000以上の注釈付きで2000ページに及ぶ新版が無事完成した(ウェブ誌「クオーツ」)。

 IFZは、新版では「どのようにヒトラーの主張が作られたのか」、「彼の目的はなんだったのか」、「今日では、ヒトラーの数え切れない主張、嘘、断定を知っている私たちから、どんな反論があるのか」という問いを踏まえ、注釈がつけられていると説明。ドイツの主要なユダヤ人グループ「ユダヤ人中央評議会(The Central Council of Jews)」の代表、ジョセフ・シュスター氏は、新版が「ヒトラーの冷酷なイデオロギーの正体を暴き、反ユダヤ主義に立ち向かうことに貢献する」ことを望むと述べている(英デイリー・メール紙)

◆オークション価格上昇。買っているのは普通の人?
 新版の売れ行きは予想以上だと、各紙は伝えている。英デイリー・メール紙によれば、初回発行が4000部と少なかったことから、1冊59ユーロ(約7500円)のものが、ネットオークションサイトでは600ユーロ(7万6000円)から685ユーロ(8万5000円)で取引されているという。予約も1万5000冊入っており、ドイツの業界誌『Buchreport』 によれば、近日中に発表されるベストセラーリストのノンフィクション部門で、20位にランクされる模様だ(デイリー・メール)。

 IFZの広報担当者は、教育的な目的のため、歴史家や科学者などが新版を購入しており、政治や歴史に興味を持つ一般の人々にも受けていると説明する。本の成功に驚き、極右の活動を煽るのではと心配する意見もあるが、ヒトラーの議論を批判する注釈付きということもあって、ネオナチからの高い需要は見られないとのことだ(AFP)。

 学術版編集者の1人、ローマン・テッペル博士も、「『わが闘争』、特にオリジナル版はネオナチのシンボル」だが、「内容そのものにはあまり興味を示していない」と解説。彼らにとっての本の重要度は低下していると述べる(クオーツ)。

◆時代は変わるが、過去を顧みるのも大切
 フェアフィールド大学のユダヤ研究者、ガブリエル・ローゼンフェルド教授は、「ヒトラーはだんだんとポピュラー・カルチャーや知識層の間で正常化している」とし、モラルや歴史的な面から離れ、ヒトラーを商品として好ましくさせるポップな現象がトレンドになっていると指摘。『わが闘争』を扱った演劇、風刺するコメディアン、日本で発行されている漫画版などを例として挙げている(クオーツ)。

 一方ガーディアン紙は、新版の人気は、過去を解読する継続した深い必要性から来るものであることは間違いないと述べ、「極右の外国人嫌いが頭角を現す今、真剣に歴史の悪を顧みることは、良いことだ」という新版の出版社のコメントを紹介。また、隠すのではなく、さらすことが、禁じられたものによって目覚めさせられるだろう陰謀的思考や邪悪な魅力を無力化する、最良の方法であると説いている。

(山川真智子)

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