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北朝鮮のニューノーマル:政府は国民5万人を海外派遣して外貨獲得 国民は闇市場で市場経済に移行中

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北朝鮮のニューノーマル:政府は国民5万人を海外派遣して外貨獲得 国民は闇市場で市場経済に移行中

 北朝鮮の人権状況について調査・報告を行う国連のダルスマン特別報告者は、北朝鮮が外貨を獲得するため、自国民を労働者として海外に送り出し、強制労働といえるほど劣悪な労働条件で働かせていると指摘し、北朝鮮を非難した。ダルスマン氏は、まもなく行われる日中韓首脳会談でも、北朝鮮の人権問題を議題として取り上げ、北朝鮮に働きかけるよう呼びかけている。

◆制裁をかいくぐって外貨を獲得する手段
 北朝鮮は現在、国連などからの制裁によって金融活動を制限されており、外貨を切実に必要としている。北朝鮮の財政状況は非常に厳しいものだ。そこで、制裁をかいくぐって外貨を獲得するために、自国民を労働者として海外に派遣している、というのがダルスマン氏の説明する図式だ。AP通信、インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ紙(INYT)などが伝えている。同氏は28日、国連総会の委員会に調査結果の報告書を提出したほか、記者会見を行った。

 ダルスマン氏が述べるところでは、複数の調査によると、現在、5万人以上の北朝鮮人労働者が、海外で、主に炭鉱業、木材切り出し業、繊維産業、建設産業で働いているという。さらに、その数は増大中だそうだ。大多数は中国とロシアに派遣されているが、他にも、アジア、アフリカ、中東、ヨーロッパの15ヶ国が報告書には列挙されている。

◆強制労働に値する劣悪な労働条件は、まさに国管理のタコ部屋
 注目すべきは、それらの労働者が置かれている労働条件の劣悪さだ。複数の市民社会組織の報告をもとに、ダルスマン氏が伝えるところによると、労働者が受け取る月収は平均120~150ドルで、食事も十分に与えられていない。時には1日20時間も働くことを強制されるが、休日は月に1~2日しかない(AP通信)。日本経済新聞によると、北朝鮮の監視員がパスポートを取り上げ、労働者の行動を厳しく管理している。INYTによると、労働者は雇用契約の詳細を知らされていない。

 市民社会組織が元海外派遣労働者に聞き取り調査したところによると、国が定める社会階級に従って、派遣先が決定されるという。階級の低い者が、最も危険でうんざりする仕事を割り振られるという(AP通信)。

 雇用した会社は、北朝鮮政府に対し、かなりの金額を支払うということだ。北朝鮮はそれによって年間12~23億ドル(1453~2786億円)を得ていると考えられる、とする「北朝鮮海外労働者の人権国際ネットワーク」の2012年のレポートをダルスマン氏は引用した。ちなみに、外務省によると、北朝鮮が2014年に輸出によって得た額は43.6億ドル相当だったそうだ。

◆たくましく生き抜いてきた北朝鮮の人たちが発展させた「闇市場」
 厚いベールに閉ざされた北朝鮮の国内事情をうかがい知ることは難しいが、北朝鮮社会にも大きな変化の波が押し寄せているようだ。

 ダルスマン氏は、経済苦境と気候不良から、北朝鮮の人々は、生きるために、自分たちでやりくりするようになり、政府に頼る度合いを次第に下げている、と語った(AP通信)。つまり、政府が頼りにならないので自分で何とかせざるを得なかった、ということだろう。

 ダルスマン氏は、北朝鮮で小企業が設立されていることや、携帯電話の利用者が増大していることなどを挙げ、それらは、北朝鮮で漸進的な変化が起きているという印象を与えるものだ、と語っている。

 これらの変化をより詳しくスケッチしているのが、ロイターの北朝鮮通信員の記事である。北朝鮮では、人々は必要に迫られて「闇市場」を発展させてきたが、今やこの闇市場が「新常態(ニューノーマル)」になっている、と記事は語っている。

 1990年代中盤、農業政策の失策と、洪水と、ソ連崩壊の影響で、北朝鮮では飢饉(ききん)が発生した。国の配給制度が崩壊し、何百万人もの北朝鮮国民が、生きるために作れるものは何でも作って、非公式で販売、物々交換することを余儀なくされた、とロイターは語る。

 それから20年、初歩的だった市場はずいぶん発展してきた(ロイター)。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、北朝鮮の現状を「半市場経済」と呼んでいる。この市場は近年急速に発展し、人口の最大4分の3に生計を提供しているとも言われているという。ロイターによれば「ドンジュ(金主)」と呼ばれる中産階級も登場してきた。(闇市場など)非公式の経済活動で財産を築いた人たちだ。

◆北朝鮮政府は闇市場を追認し、市場経済への移行を図るか
 北朝鮮の闇市場では、北朝鮮ウォンの他、米ドル、中国の人民元が普通に使えるそうだ。むしろ、自国通貨への信用の低さから、ドル、元での支払いが好まれるらしい。現在、大半の民間取引はドル、元で行われているという(WSJ)。

 2009年に北朝鮮ウォンはデノミが実施され、100ウォンが1ウォンに切り下げとなった。さらに政府は、新旧の通貨を切り換える際に、交換できる限度額を定めた。この措置で、個人が溜め込んだ富の多くが、文字どおり紙屑となってしまった。以来、闇市場では、ドル、元の需要がますます高まり、反面、ウォンの価値は大きく低下した。公定レートでは1ドル 105ウォンだが、闇両替では1ドル8400ウォンにもなっている。

 面白いのは、国営デパートでも、ドル建てで販売する場合は、公定レートではなく闇レートを使用している点だ。ロイターは、このデパートの例は、北朝鮮で闇市場がどれほど新常態になっているかを、はっきり例証するものだと語っている。

 金正恩政権は、どこでも使われている闇レートと、広く行き渡ったもぐりの経済(闇市場)を実質的に受け入れた、と北朝鮮専門家らは指摘しているという。また、金正恩政権には、現行の市場の実態を反映した方向で経済改革を進める以外、ほとんど選択肢がない、さもなければ権力統制を失う危険がある、とも言われているそうだ。

「金正恩政権では、民間ビジネスの利益と効率を何らかの形で損なうことになるような政策は、これまで一つも実施されていない」と韓国・国民大学校の北朝鮮専門家のアンドレイ・ランコフ氏は指摘する(ロイター)。同氏によれば、中国が35年前に鄧小平体制下でそうしたように、金政権が正式に市場経済を採用するのは、時間の問題でしかないという。ただしそれも、現実にすでに行われていることを追認するものでしかない、としている。

(田所秀徳)

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