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“移民は侵略者” 重武装の「自警団」がパトロール…米国で高まる反移民感情

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“移民は侵略者” 重武装の「自警団」がパトロール…米国で高まる反移民感情

 ヨーロッパが移民問題で揺れる中、世界最大の移民国家アメリカでも、移民に関する議論が高まっている。次期大統領選に立候補している保守派のドナルド・トランプ氏は、不法移民が行き来するメキシコ国境に「壁」を建設するべきだと主張。アリゾナ州などのメキシコ国境では、不法移民の流入を「侵略」と見る退役軍人らが自警団を結成し、重武装で警備している実態もある。また、合法的に市民権を得たホワイトカラーの「エリート移民」による詐欺・横領といった犯罪も報じられている。こうした事例に象徴されるように、一部で「移民がアメリカを荒廃させ、支配する」という懸念が広がっているようだ。

 その一方で、近年は移民のアメリカ社会への融合が進み、その犯罪率も低下しているという主張もある。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)のオピニオン記事は、「一部の保守派の友人たちには申し訳ないが」と前置きして、移民の融合が進んでいるとする専門機関がまとめた報告書を取り上げ、反移民派を牽制している。

◆「愛国心」で国境を警備する自警団
 英紙デイリー・メールは、メキシコ国境地帯の「自警団」の活動を、米フォトジャーナリスト、ジョニー・ミラノ氏による写真を使って紹介している。現在、国境地帯では、2、3百人の「自警団」が活動していると言われるが、ミラノ氏が追ったのは、「ネイラー」ことティム・フォーリー氏というベテランが率いるアリゾナ州のグループだ。メンバーは軍隊並みの自動小銃などで武装し、迷彩服と防弾チョッキで身を包む。多くは元警備員や退役軍人だ。

 ミラノ氏らによれば、自警団のメンバーは、移民の流入を「侵略」だととらえている。中には、メキシコ国境をかつて任務についたイラクやアフガニスタンの戦場になぞらえ、「アメリカを守る任務」に燃えている者もいるという。「ネイラー」のグループは、日夜フェンスで仕切られた国境や近くの民家などをパトロールし、不法移民や麻薬取引の現行犯を確保したり、当局に情報提供したりしている。ただし、ミラノ氏は「少なくとも連邦レベルでは、入管・国境警備当局は自警団の活動を認めていない」と語る。それでも、特に情報提供に関しては自警団の活動が重宝されているというグレーな実態もあるようだ。「ネイラー」は「国境の状況が正されるか、もしくは俺が死ぬまで続ける」と語っている。

 自警団による国境警備は、米独立戦争時の民兵になぞらえて「ミニッツマン・プロジェクト」と呼ばれ、2004年ごろから行われている。不法移民に発泡するなどの実力行使に批判的な声も多いが、2005年に当時のシュワルツネッガー・カリフォルニア州知事が、ラジオのインタビューで「彼らは素晴らしい仕事をしている」と讃えるなど、活動に賛同する著名人もいる。

◆「エリート移民」の巨額詐欺事件も
 メキシコからの不法入国者の多くは、米国内で低賃金労働につき、金が貯まるか当局の摘発に遭いそうになれば帰国するといった形で、入出国を繰り返す傾向にある。統計によれば、アメリカの移民の帰化率は50%と、ヨーロッパ、カナダ、オーストラリアよりもずっと低い。それだけに、合法的に市民権を得たホワイトカラーの移民は、「エリート移民」だと見なされる傾向にある。しかし、その中にも悪質な犯罪を重ねた末に母国に逃亡するといった例も見られる。

 WSJが取り上げるその一例は、インド出身のイフティカール・アーメド氏(43)の華麗な経歴と犯罪だ。アーメド氏は母国のエリート校、インド工科大学を出て渡米し、名門ハーバード大学のビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得。大手投資銀行ゴールドマン・サックスを経て、2004年に老舗ベンチャー・キャピタルの「オーク・インベストメント」に入社した。

 アーメド氏の犯罪が本格化したのはオーク社入社後だ。取引書類の改ざん、偽の為替レート、偽の請求書などを使った一連の詐欺行為で6500万ドル(約78億円)もの不正な利益を上げたと見られている。同氏はアメリカ国籍(インドとの二重国籍)を取得し、妻と2人で高級住宅街のコネチカット州グリニッジの大邸宅に暮らしていた。マンハッタンにも高級アパートを2部屋所有し、地域やインドの慈善事業にも熱心だったようだ。アメリカの地域コミュニティやインド系富裕層の間では名士扱いだったという。

 一連の犯罪は、今年5月にオーク社入社以前のインサイダー取引容疑で逮捕された後に発覚した。その中には、額面200万ドルの香港株を2000万ドルと偽って顧客に買わせ、差額の1800万ドルをポケットに入れたというものもあったという。アーメド氏は逮捕後、アメリカとインドのパスポートを放棄したというが、現在は行方不明となっている。米当局や担当弁護士によると、期限切れのパスポートで出国し、現在は母国インドに潜伏中とみられる。

◆移民の同化は進む一方という統計も
 上記のような移民に関するネガティブな報道がある中、WSJは別のオピニオン記事で、米国に広がる反移民感情に警鐘を鳴らす。同記事は、米国科学・技術・医学アカデミー(National Academies of Sciences, Engineering and Medicine)がまとめた「400ページに及ぶ詳細な報告書によって明かされた事実」を紹介している。

 それによれば、米移民のほとんどは、アメリカ社会に同化する傾向を強めているという。「あらゆるデータを通じて、同化は時間が経つほど進んでいる。この国での滞在期間が増えるほど、アメリカ生まれのアメリカ人に近くなり、2世3世は彼らの両親よりも、もっとアメリカ的になっている」と同記事は記す。「同化」の尺度の一つとなっている「英語力」は、ヨーロッパからの移民が中心だった昔よりも現在の方がずっと高く、「多くの者は既に英語が話せる状態で渡米する」という。報告書によれば、海外生まれのアメリカ人のおよそ85%が自宅で英語以外の言語を使うが、南カリフォルニア地域のメキシコ系アメリカ人の例では、3世になると英語が中心言語となり、自宅でスペイン語を優先する人は4%に下がる。

 また、同記事は、「外国生まれの者の投獄率は、アメリカ生まれのたった4分の1」「最低教育レベルの移民の就業率は、同等の教育レベルのネイティブよりも高い」といったデータを上げ、犯罪率の高さを理由とした反移民論を打ち消す。そして、「移民反対派は、アメリカは、この国をメキシコに変える群衆に蹂躙されていると訴える。しかし、ほとんどのニューカマーが実際にしているのは、これまでもこれからも『アメリカ人になる』ということだ」と結んでいる。

(内村浩介)

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