韓国は外国人に厳しいから?ウガンダ内務大臣の突然死で誤解を生んだ背景とは

 韓国を訪問したウガンダ内務大臣が、帰国途中の飛行機内で突然死した事件が波紋を呼んでいる。9月21日、韓国政府関係者および主要メディアは、住民登録システムを学ぶために訪韓していたウガンダ内相ニャカイリマ氏が、帰国する際に乗った飛行機で急性心不全のため死亡したと伝えた。

◆韓国政府の対応に、ウガンダ国内で非難の声
この事実を受け、ウガンダ国内では非難の声があがっている。ウガンダのムセベニ大統領が、ニャカイリマ内相の葬儀で「(内相が)韓国滞在中に腹痛や不快感を訴えたが、韓国の病院は保険未加入を理由に診療を拒んだ」とコメントし、現地メディアを中心に、韓国政府の対応に不手際があったのではないかとの疑いが持ちあがっているためだ。

 一方、韓国政府や、ニャカイリマ内相の訪韓を担当した韓国国際交流財団の関係者はこれを否定。ニャカイリマ内相は、旅行者が入る保険にも加入していたし、病院での治療を要求しなかったとしている。韓国メディアの続報では、韓国政府はウガンダ政府に見解の齟齬がないよう事実を伝えたとしており、ウガンダ政府関係者も概ねこれに理解を示したとされる。

 国の要人クラスが国を訪問し体調不良を訴えたとして、「保険に入っていないから」という理由で治療を受けさせないというのはありえない話だ。ウガンダ大統領のコメントも、どこか間違った情報をもとになされた可能性が高い。

◆韓国国内の外国人に対する待遇の厳しさ
 しかし、そのような疑いが韓国側にふりかかる理由がないともいえない。というのも、韓国は外国人に対する待遇が厳しいとされ、社会問題化して久しいからだ。2014年現在、韓国には約180万人の外国人が在留している。そのうち、外国人労働者数は56万人となる。88年のソウル五輪以降、合法および不法に滞在する外国人労働者が徐々に増え続けているが、ここ10数年でその数は急増している。

 そんな社会的背景のなか、外国人労働者に対する差別、暴力、賃金未払いなどが相次ぐ。韓国人雇用主の側が「強制退去」などをチラつかせ被害者の口を封じてしまうため、被害状況も発覚しにくい。悪質な場合、凶器などを持ち出し露骨に脅迫することもあるそうだ。過去には、未払いの賃金支払いを求めたバングラデシュの男性外国人労働者が、韓国人雇用主に鉄パイプで脅迫される姿が映像として報道されたこともある。当然、労働および生活環境改善を訴える外国人たちの声は、日増しに高まっている。

◆問題となった”保険”に対する規制はより強化
 今回、問題となった“保険”についても、韓国政府は規制を強める方向に動いている。韓国保健運用当局は、10月1日から韓国で働く外国人が医療保険に加入できるようになる時期を、入国日から3ヶ月以降とすると明らかにしている。今回の規制強化は、いわゆる“フリーライド”(保険料を払わず医療費支給だけ受ける不正利用)を防ぐ目的があるとされ、留学や結婚など正規の入国が認められる場合には入国当日から加入できるとされているものの、まっとうに在留・生活しようとしている外国人にとっては生活条件が不利になるという点については否めない。

 現在、韓国は日本同様に社会保障費の増大や少子高齢化に悩まされている。そのしわ寄せが外国人にくるという状況はすでに露見しているし今後も続くと予想される。ウガンダ内相の急死という悲劇が外国人を取り巻く環境にどう作用するか。韓国に対する国際世論の在り方とともに、今しばらく見守る必要がありそうだ。

Text by 河 鐘基