中国失速で資源大国オーストラリア打撃 21世紀のゴールドラッシュも夢に

 オーストラリア経済の4-6月期の成長率が、0.2%と予想を大きく下回った。鉄鉱石や石炭などを、需要の旺盛な中国に輸出し、これまでうまくその成長や投資ブームに「乗っかって」来たが、中国経済の減速を機会に、資源に頼る経済も限界になっている。

◆かつてない低成長
 豪統計局によれば、2日に発表された4-6月期の成長率は、予想の0.4%を下回る0.2%で、2013年の第1四半期以来の低成長となった。豪の輸出の柱は鉄鉱石と石炭であり、APは、最大の貿易パートナーである中国での資源需要の低迷が影響したとしている。為替も中国製造業の弱さを示す指標を受け、2日には2009年以来初めて、1豪ドルが0.7米ドルを下回る安値を付けた(AP)。

 豪ウェブ・ニュース『news.com.au』は、豪経済は特に中国経済の混乱に弱いと指摘し、「他の多くの国々とは異なり、中国の投資ブームにうまく乗っかることができたため、中国の建設業や投資における減速は、かなりの打撃」と述べている。

◆鉱業では不振が続く
 英ガーディアン紙は、中国経済の減速がもたらした顕著な例として、パースから1500キロ離れたピルバラ地区の鉱山の町、ポートヘッドランドを取り上げている。

 2011年、鉄鉱石の埋蔵量が豊富なこの地域は、21世紀のゴールドラッシュを迎えていた。インフラ整備や近代化のための中国の天然資源の需要に牽引されて、生産は好調。労働者の8割は、平均賃金の6、7割増しの給料に魅かれ、都市から流れ込んだ者だったという。増える労働者を見込んで、住宅も続々と建設されたが、5年後の今、中国を当てにした鉄鉱石ブームは去り、仕事とともに労働者も減った。ピーク時には質素なプレハブの住宅でさえ100万豪ドル(約8200万円)の値がついたが、現在はその3分の1の値段でも買い手がつかない。ほぼ頭金なしで、マイホームを購入した労働者たちは、ローンの返済のため、長時間の低賃金労働を受け入れているという(ガーディアン紙)。

 APによれば、鉄鉱石の価格は、2011年のピーク時で1トン当たり185ドルだった。豪政府は、2014年から2015年は96ドルとしていた価格予測を、今年度は48ドルにまで下げている。

 石炭の輸出も低迷している。Institute for Energy Economics and Financial Analysisでエナジー・ファイナンスを研究するティム・バックリー氏は、インドも含め、上顧客であった中国が豪の石炭に背を向けており、世界の石炭大手は豪の炭鉱への興味を失っていると述べる。大手エネルギー企業は水力、風力などの再エネに莫大な投資を始めていると述べ、現在の炭鉱業が構造的減退に入っていると説明している(豪ABC)。

◆中国低迷を豪経済は乗り切れる?
 もっとも、経済学者のポール・クルーグマン氏は、中国停滞が豪経済にもたらすリスクは重視していない。同氏は「オーストラリアは大きく、非常に多様性がある経済。他の輸出もあるし、柔軟な為替レートもある」、「過去数年を見れば、確かに豪は輸出においての弱さから打撃を受けてはきたが、豪ドル安にもなっており、その多くは相殺される」と発言している(ガーディアン紙)。

 シルバークレスト・アセット・マネージメントのパトリック・コバネッツ氏も、豪ドルが弱くなったことで、食品などの分野で中国の消費者市場に入り込むチャンスができたとし、昨年調印された豪中間の自由貿易協定が始動すれば、巨大な新市場が開けると期待する(news.com.au)。キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、ポール・デール氏も、豪ドル安で、観光客や外国人学生の取り込みに期待する(ガーディアン紙)

 一方、ガーディアン紙は、資源中心からの移行は、容易ではないと指摘。また8月の中国株の騒動で明確になったように、中国の状況がさらに悪化した場合、中国の繁栄の上に成長モデルを描いてきた国々への影響は重大だと述べ、今後の豪経済は不景気を回避できても、しばらく低成長が続くと見ている。

Text by 山川 真智子