韓国経済牽引役の現代自動車、日本勢好調の中国で苦戦 5四半期連続営業益減

 韓国のヒュンダイ自動車は23日、4〜6月期の連結決算を発表した。営業利益は前年同期比で16.1%減の1兆7509億ウォン(約1864億円)と、5期連続の減少となった。中国市場での販売不振などが響いた。一方、日本メーカーは中国での販売を大きく伸ばしている。中央日報などの韓国メディアは、日韓勢の明暗を対比する形で報じている。

 韓国経済全体の不振も続いている。韓国銀行が同日発表した同期のGDP成長率は2.2%で、2013年以降で最も低い水準となった。また、5月からの中東呼吸器症候群(MERS)感染拡大の影響で、6月に韓国を訪れた外国人観光客数は前年同期比で41%減った。

◆中国新車販売市場は日韓勢で明暗分ける
 ヒュンダイの発表によれば、4〜6月期は、営業利益が16.1%減となったほか、売上高は前年同期比0.3%増の22兆8216億ウォン(約2兆4284億円)、当期純利益は23.8%減の1兆7904億ウォン(約1905億円)となった。同期の世界全体での販売台数は123万2943台(前年同期比2.8%減)だった。

 上半期(1〜6月)の数字も芳しくない。営業利益は前年同期比17.1%減、売上高は1.4%減、当期純利益は13.%減、販売台数も251万5777台で前年同期比で3.2%減っている。特に中国での販売不振が顕著で、上半期の販売台数は5.8%減の81万3400台にとどまり、6月の中国工場の出荷台数は31%減の6万台だった。

 ヒュンダイにとっては、いずれも厳しい数字だ。韓国・中央日報は、これに反して日本メーカーが今年上半期に軒並み中国で大きく販売台数を伸ばしている点に注目している。中国市場占有率1、2位のフォルクスワーゲン(独)、GM(米)も数字を落としている中、日本勢はトヨタ(8.4%増)、ホンダ(19.9%増)、マツダ(22.9%増)と、日産を除く3社が大きく伸びている。同紙によれば、価格面で優位に立つ中国メーカー(ローカルブランド)は、流行のSUVを前面に出し、上半期の販売台数を25.1%と大きく伸ばしている。

◆SUVブームに乗れず
 韓国・聯合ニュースは、「円安や新興市場の通貨安などが影響して5四半期連続の減少となったが、厳しい経営環境の中でも(営業利益の)減少幅が1〜3月期(マイナス18.1%)よりも縮小し、業績が底を打ったとの見方も出ている」と、比較的楽観的だ。

 一方、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、もっと厳しい見方をしている。ヒュンダイは、中国に次ぐアメリカ市場でも苦戦しており、「低迷を支えるために販売奨励金を30%近く上げたにもかかわらず、(3〜6月期の)販売台数は2.6%減った」と記す。同紙は、各国のライバル社は世界的なSUVブームにうまく乗って最近の原油安も追い風にしているが、ヒュンダイは生産能力の低さがネックとなり、その波に乗れていないとしている。

 WSJは、「ヒュンダイは他の海外ブランドに比べ、中国の購買傾向の変化に対して脆弱だ。競争力のあるラインナップに欠け、ライバルに比べてマーケティングに積極的ではない」というアナリストらの見方を紹介。流行遅れのセダン中心のラインナップでSUVのニューモデルの発売が遅れていることが、ヒュンダイの販売不振の一因だと同紙は見ている。ヒュンダイはこうした指摘を払拭すべく、今年中にSUVの新車種を中国で発売するとしているが、同社幹部自らが「販売目標を下げることは避けられそうにない」と発言しているという。韓国のアナリストの一人は、ヒュンダイの今年の年間販売台数を、目標の820万台に対し、昨年実績の800万台を下回る793万台となると予測している(WSJ)。

◆GDP成長率は近年最低水準、観光客数も激減
 韓国の輸出産業を牽引するヒュンダイの低迷に象徴されるように、韓国経済全体の低迷も続いている。韓国銀行が発表した4〜6月期の韓国のGDP成長率は、前年同期比2.2%増と2013年以来最低の水準となった。これを報じた英フィナンシャル・タイムズ(FT)は、「輸入の減少」「水不足」「MERS感染の拡大」が主要因だとしている。

 同紙は「韓国政府のデータによれば、ヨーロッパ、東南アジア、日本など主要市場への輸出が減少している。最大の輸出先である中国への輸出は2.5%落ちた」と記す。特に打撃を受けている分野に、自動車、鉄鋼、石油化学製品を挙げている。

 MERSの影響による観光客減も深刻だ。韓国・ハンギョレ新聞は、6月に韓国を訪れた外国人観光客は41%も急減したと報じている。21日の韓国交通公社の発表によれば、6月の観光客数は75万925人で、前年から52万人減った。特に過去にSARSの拡大を経験している台湾と香港からの観光客がそれぞれ76%、75%と激減。同紙は「台湾と香港政府が韓国旅行警戒警報を発令」したためだとしている。最多を占める中国人観光客は45.1%減、日本人観光客も41.5%減った。韓国観光公社は、今年の誘致目標1550万人の達成を「容易ではなさそうだ」としているという。

Text by 内村 浩介