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中国「犬食祭」に世界からブーイング “大量絶滅時代”にあるべき動物保護とは?

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中国「犬食祭」に世界からブーイング “大量絶滅時代”にあるべき動物保護とは?

 今年も6月22日中国で行われた「犬食祭」。世界の主要メディアは、伝統文化か動物保護かといった論調で一斉に報道した。犬肉食習慣はアジア太平洋諸国だけでなく、スイスやフランスにもある。日本でも最近はジビエ(野生の鳥獣肉料理)が見直されているが、犬に限らず、人は身の回りのさまざまな動物を捕獲して食べて生きてきた。種の絶滅が日々進んでおり、大量絶滅の時代に入ったという説もあるなか、野生動物の保護は喫緊の課題だ。一方で、見た目のかわいさと有用性によって保護対象が偏っているとの指摘もある。保護されるべきものは何なのだろうか。

◆世界は「犬食祭」をこう報道した
 話題になった「犬食祭」は、インドシナ三国と国境を接する中国広西チワン族自治区玉林市の夏至の祭りで、1995年からライチと一緒に食べるようになったという。江南地方特有の高温多湿の気候がピークになる夏至の時期、犬肉を滋養強壮食として食べる習慣は古くからあり、日本の「土用丑の鰻」のように、最近商業的行事食となったようである。

 祭りで食される犬は1万頭とも言われるが、「羊頭狗肉」ならぬ「狗頭別肉」でないことを証明するため、路上で生きた犬を殺して捌いて売る光景を2011年にガーディアン等の外国メディアが報じたことで、世界中で「残酷」「不潔」等のブーイングの嵐となった。昨年は現地に国内や欧米の動物愛好家が乗り込んで大論争になった。

 今年も世界の主要メディアはこの件を報じたが、昨年私費と内外からの寄付を集めて350匹の犬を買った中国人女性ヤン・シャオユンが、今年も100匹買って命を救ったことが話題となった。ガーディアンは、ヤンは現地に犬のためのシェルターを作る計画だが、何者かに妨害されており、「現時点では我々に人々の習慣を変える力はない、これは政府の責任だ」という声を伝える一方、犬肉食支持者のこういう声も伝える。「食の文化規範はあらゆる種類があり、あなたたちは七面鳥を食べる、ではなぜあなたたちは犬肉食禁止を我々に強いようとするのか?」「反対派は我々を愛も人間性もないかのように言うが、人は皆違う状況にある。みんな一緒にはできない」 (6月22日)。

 ニューヨークタイムズは、ワシントンに拠点がある動物保護団体活動家の目撃談として、「男がケージから犬を出して棍棒で殴り始めると、犬は絶叫した・・・それを聞くのは本当に辛かった」「ダルメシアンその他、首輪を着けた犬を多数見かけた。あれはペットが盗まれた可能性がある」等、悪質な犯罪を匂わせ、地方政府が取り締まりに乗り出しているものの、現地はお構いなしだと伝えた。一方、イギリスのコメディアン、リッキー・ジェルヴェとブラジルのスーパーモデルのジゼルなどの有名人が祭りの廃止を呼びかけ、世界中300万人が知事への中止嘆願書に署名したとも述べている(6月22日)。

 ドイツのシュピーゲルは、犬がケージごと生きたまま茹でられる等悲惨な光景を報じ、狂犬病を持った野犬も含まれると指摘しつつ、犬肉売り人の「あなたたちが牛肉食をやめれば、私たちもやめる」(6月22日)という声も伝えている。フランスのフィガロも同様のレポートをしつつ、同祭が犬1万頭だけでなく猫4万頭も虐殺している、と伝えている(6月22日)。中国と蜜月関係のロシアは、ロシア・トゥデイが「中国では猫と犬の殺害は違法ではないが多くは野良猫・犬のため、健康被害の危機を繰り返し当局が警告している」「地方政府は祭りを後援していない」と、当局寄りの姿勢で報じている(6月22日)。

◆スイスやフランスにも犬肉食文化がある
 犬肉食習慣はアジア太平洋諸国だけでなく、スイスやフランスにもある。ロシア・トゥデイは昨年、スイスでは1993年に動物保護活動家が、家のペットを食べることを禁止する法案を上程したが議会は否決した、と報じた。犬肉販売は禁止されたが、いくつかの州では依然としてクリスマスに犬肉のソーセージ、猫肉の塩漬け燻製を作っており、フランスのブリジッド・バルドー財団などの動物愛護団体から中止要請活動が行われているという(2014年11月26日)。フランスでも1960年代まで犬肉はジビエ・レストランで「ウサギ」と偽って供されていたそうだ(堀井敏夫『パリ史の裏通り』白水社 1999年)。

「人類最古の友」である犬食に対する嫌悪は、牧羊犬を飼う文化圏で強いと言われるが、スイスやフランスに犬肉食の文化があることは意外である。ドイツの「豚肉の血のソーセージ」など、殺して食べる以上、血の一滴も無駄にしないという文化はヨーロッパにもあるが、それだけ有用動物は、特に冬期が厳しい環境に生きる人々にとって、貴重な蛋白源だったのである。多くの動物愛好家・保護活動家が主張するアニマル・ライツの概念は、家畜の肉がマーケットにあふれている近年に芽生えた思想であり、その基盤は伝統的生活の文脈からは離れている。

◆大量絶滅の時代に保護すべき動物とは
 熱帯雨林を伐採して肉牛用の牧場や飼料栽培がおこなわれる一方、多様な理由で野生動物が増えすぎて害獣化し、その駆除はアメリカやオーストラリアなどの自然保護の先進国でも不可避となっており、「イルカはダメでカンガルーはいいのか」との指摘もある。日本でも猪、鹿、熊が人里で餌を漁るので問題になっており、捕獲してジビエ料理にして食べることが流行しつつある。しかし世界は野生動物の絶滅が続いており、地球史上6度目にして最大の大量絶滅の時代に入っているという指摘もある(ナショナルジオグラフィック2014年8月27日)。

 その生息環境ごとに、野生動物の生存を保護することは、人類に課せられた使命というべきだが、保護動物は見た目のかわいさと有用性から、特定の種類に保護対象が偏りがちとの指摘もあり、議論を呼んだ(アーネスト・スモール「新しいノアの方舟――美しく有用な種に限る」『Biodiversity』2011年1号)。野生動物保護の原則は、生息環境が存続の危機にあり、生息数が減っている動物が保護されるべきで、逆に牧畜や養殖などで人間が飼養して増やせている動物は、食べてもいいことになる。しかし、国や地域でさまざまな考え方がありなかなか共通認識を持つことは難しく、中国の犬肉食をめぐって引き起こされたような対立は今後も続きそうだ。

(Newsphere編集部)

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