プーチン大統領、なぜ高支持率維持? 欧米制裁と不況に負けないロシア人のプライドとは

プーチン大統領

 欧米の経済制裁と原油安、ルーブルの急落により、ロシア経済が苦境にある。それでもプーチン大統領の支持率は、80%近くを維持している。その要因は何か。旧ソ連時代から取材を続けてきたスペイン人記者・ダニエル•ウトゥリーリャ氏へのインタビューから探る(ゲオポリティカル•ムルティコロール紙)。

◆ロシアの威厳を満たすプーチン大統領
 ロシア人にとって、「ロシアは大国である」という威厳が重要だ。プーチン大統領は、それに応えてくれている。だから、ロシア国民から高い支持を受けている。例えば、「(食べ物がなくて)じゃがいもしか無ければ、それを食べる。しかし、プーチンを常に支持することにかわりはない」と語った者もいる。国は困難でも、大統領を信じる国民の姿を代表した言葉である。

 クリミア併合時、プーチン大統領の支持率は80%に到達した。ロシア国民にとって、領土を回復してくれた国家指導者、と映ったからだ(※1)。

 また、多くのロシア国民は、「米国と闘うプーチン大統領」に満足している。例えば、シリア・アサド政権を支援して米国に攻撃させなかったこと、スノーデン氏を保護して米国への送還を阻止していることなどだ。

◆ぬぐえぬ欧米への不信感
 プーチン大統領は、「ロシアが国家の尊厳を維持するための行動を取ろうとすると、単に『我々がロシア人だ』という理由だけで、それを拒もうとする動きが欧米で常に生まれる」と不信をあらわにしたこともあった。欧米はロシアの考えそのものに関心がない、と語る政府関係者もいたという。

 ウクライナなどのNATOへの接近も火種だ。ジョージ・ブッシュ大統領は過去、ゴルバチョフ書記長に対し、NATOは旧ソ連を構成していた国には干渉しない、と約束していた。しかし実際には、バルト三国が加盟し、ウクライナも加盟を検討していた。ロシアは非常に立腹しており、ウクライナ紛争は米国が仕掛けたクーデターとまで考える国民もいるようだ(スペインのエル・パイス紙)。

◆ プーチンはアルファの男
 欧米では、ロシアに強い指導者が誕生することを好まない傾向がある。パウエル元米国務長官は、プーチンと目線を合わせるとKGBを連想する、と述べたこともある(スペインのレビスタ・カラ・デジタル情報紙)。

 ただ、前述のダニエル記者によると、彼はKGBの職員だが中枢組織には所属しておらず、あたかも主要なポストにいたかのような非難はあたらない、という。さらに、公務員時代からプーチンを良く知る米国のある官僚は、彼は汚職とは無縁の潔癖な性分で、愛国心が非常に旺盛だ、と評しているそうだ。さらに、プーチン政権下でのロシアの発展を賞讃している。

※1 ウクライナは歴史的変遷の激しかった領土であるが、ロシア帝国との繋がりが強く、ウクライナの東北、東、東南部はロシア系住民が75%を占めている。旧ソ連時の1954年、フルシチョフ第一書記が、ウクライナにクリミアを割譲した。当時は同じソビエト領土での出来事であったから問題視されなかった。しかし、ウクライナが独立し、EUへの加盟の意思を強めて行くと、クリミアに残されたロシア人、領土そして海軍基地のことがロシアにとって深刻な問題となった。そのためプーチン大統領は、強硬手段でロシア領土に「復帰」させたのだ(スペインのエル・パイス紙)。

Text by NewSphere 編集部