中国、中南米諸国と関係強化で米国に圧力? 北京で33ヶ国の閣僚会合初開催

 8-9日、北京で初めて、中国・ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体フォーラム(CELAC)の閣僚級会合が開かれた。CELACは2011年、反米ベネズエラらが主導し、中南米33ヶ国の経済関係強化を目指して創設された地域機構だ。

 中国の習近平国家主席は、この会合を積極的に誘致した。米国が加盟していないこのCELACは、中国にとって、ラテンアメリカでの影響力をさらに強められる組織だ。中国の外交戦略とラテンカリブ諸国の思惑について、欧州メディアが注目している。

◆ 中国、ラテンアメリカへ巨額投資表明
 フォーラムでは、習主席とベネズエラのマドゥロ大統領などの個別会談も行われた。

 習主席は演説で、インフラ整備、エネルギー資源開発、通信、農業、技術革新のため、2019年までに350億ドル(4兆600億円)の借款を約束した。さらに2020年から10年間で、2500億ドル(29兆円)の投資をする意向もあると語った。CELAC加盟国の中には、台湾を承認し中国とは国交のない国も12あるが、これらの国にも借款を提供する用意があるという。

 中国と同地域との取引は、2000-2013年で約22倍に成長し、2750億ドル(31兆9000億円)にまでなっている。中国は2020年からの10年間で、さらに5000億ドル(58兆円)まで成長させると意気込んでいるようだ(以上、エル・パイス紙や中南米インフォラータム・レポート)。

◆ 中国はベネズエラへ集中投資し、石油を獲得
 中国にとって重要な国は、ブラジル、アルゼンチン,ベネズエラ、エクアドル、チリ、ペルーだ。

 ブラジルは、中国にとってラテンアメリカ最大の貿易相手国である。中国には主に大豆や鉄鉱石を輸出している。昨年7月には、両国の新たな協力事項が確認された。ブラジルの飛行機メーカーエンブラエル社は、60機、32億ドル(3712億円)分を中国へ輸出することも決めている。また中国の投資は主に石油開発に向けられている。

 アルゼンチンはブラジルに次ぐ貿易相手国であり、中国には主に大豆を輸出している。エクアドルは石油を輸出している(今回、同国には53億ドル(6148億円)の借款が決まった)。チリは生産する銅の3分の1を中国に輸出している。ペルーも同様に銅を輸出している (英国BBCムンド他複数)。

 原油安に苦しむベネズエラには、中国は200億ドル(2兆3200億円)の投資を約束した。中国は2007年からベネズエラに470億ドルの借款を提供しているので、さらに上乗せした形だ。同国は返済として、52万4000バレル/日の石油を中国に送っている。昨年7月にはベネズエラの発展に38項目の合意を交している。ラテンアメリアにおける中国からの投資の50%はベネズエラに向けられた。

◆ ラテンアメリカは市場としても魅力的
 ラテンアメリカにとって中国は資金の入手先としても評価されている。IMFからの借款には常に複雑な条件が伴う。中国からはそのような条件がない。

 中国はラテンアメリカを豊かな消費市場としても見ている。労働コストが上がっている中国から現地生産に踏み切ることも考えている企業もあるようだ。例えば自動車生産だ。既に、ブラジル、コロンビア、ベネズエラ、ペルー、アルゼンチンでは、低価格の中国製自動車が普及している。今年は200万台の輸出が期待されている(BBCムンド)。

 一方米国は、キューバとは国交正常化をスタートし、経済的にも双方の関係はこれから強まる。コロンビアは中国より米国との関係が深い。ブラジルのルセフ大統領は米国との関係改善に積極的姿勢を示し、今年訪米が予定されている。一方、米国はベネズエラの政府関係者には制裁を加えている。

 ラテンアメリカとの関係強化に動き出す中国と米国の動向に、関心が集まっている。

Text by NewSphere 編集部