朴大統領、首脳会談には「日本の姿勢転換が重要」 国民の目線にあった慰安婦問題合意案も求める

朴槿恵大統領

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は12日、年頭の記者会見を行った。その中で、日韓首脳会談について「(安倍首相と)会談しない理由はない」と述べる一方、日本側が歴史認識問題で姿勢を改める必要があると注文をつけた。

 また、北朝鮮に対しては、再統一に向けた対話に応じるよう呼びかけた。主要韓国のメディアのほか、ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)、人民日報傘下の中国国営英字紙『グローバル・タイムズ』などが会見の内容を詳しく報じている。

◆日本側に歴史認・姿勢の「変化」を要求
 朴大統領は、いまだ実現していない安倍首相との一対一の首脳会談について、「できない理由はないが、過去に首脳会談をすると、むしろ後退することもあった」と述べた(中央日報)。この発言について、グローバル・タイムズは、「具体的にいつの首脳会談がそうだったのかは示さなかった」と記している。

 また、同大統領は「今年は韓日国交正常化50年を迎える意義深い年だ」と強調。安倍内閣に対し、「正しい歴史認識に基づいた新たな未来志向の日韓関係」を探ることを求めた(グローバル・タイムズ)。そして、日韓首脳会談は「それを一歩でも前に進めるものであるべきだ」とする一方で、「今はまだ難しさがある」「このためには日本の姿勢変化が重要だ」とも付け加えた(中央日報)。会談に応じる姿勢は示したものの、その前提条件として歴史認識問題で日本側に譲歩を求めた形だ。

 慰安婦問題については、「慰安婦被害者は高齢化が進んでいるため、早期に解決策が出てこない場合、永久に未解決になりかねない。それは韓日関係のみならず、日本にとって歴史上の重荷になるだろう」などと語った(朝鮮日報)。また、「(日本側から)合意案が出てきても、国民の目線に合っていなければ何の役にも立たない」とも述べた。 

 これに対し、菅義偉官房長官は13日の記者会見で、「隣国の首脳が会うのに前提条件を付けるべきではない」と強調した。

◆対北朝鮮では対話路線を強調したが、専門家の評価は芳しくない
 一方、北朝鮮に対しては、「北朝鮮はもうためらうのをやめ、話し合いを求める声を受け入れるべきだ」と呼びかけた。NYTは、朴大統領の年頭会見に先立ち、北朝鮮の金正恩第一書記が元日の演説で、条件が整えば朴大統領と会う用意があると述べた事に触れている。韓国英字紙『コリア・タイムズ』は、この両首脳の発言により、南北に一時的な「融和的なムード」が漂っているとしている。

 また、朴大統領は、昨年2月の旧正月に北朝鮮の山岳リゾートで行われた離散家族の再会行事を今年も行い、恒例化すべきだと提案。「離散家族問題の根本的な解決」を探る南北の話し合いの必要性を強調した。そして、慰安婦問題同様、この問題についても、「当事者が高齢化している。これ以上引き伸ばすことはできない」と述べた(NYT)。

 しかし、韓国内の北朝鮮専門家の評価は芳しくないようだ。『コリア・タイムズ』は、「彼女は従来の政府の立場を繰り返し述べただけだ」「大統領は、北との首脳会談を受け入れる用意はあると言ったが、(あくまで儀礼的なもので)直接金正恩の提案に返答したようには聞こえなかった」といった大学教授らの見方を伝えている。

◆経済政策では、国民と「巨大な認識のズレ」があると批判
 一方、国内問題については「経済復興」がメインテーマに掲げられたようだ。13日付の朝鮮日報の社説は、大統領が口にした「経済」という言葉の回数が昨年の年頭会見の2倍近くに達したことがそれを裏付けているとしている。

 同紙によれば、朴大統領は、新年に向けた希望として「(今年から始まる)経済革新3カ年計画を成功させ、その結実を国民の皆さんに届けたい」と述べた。また、政権についてからの過去2年間を振り返り、「私は国の経済を建て直し、国民の生活を改善させるため一瞬も気を緩めたことはなかったと思う」とも語った。

 しかし、同社説は、自らの経済政策に自信を見せる朴大統領の発言と、経済の低迷にあえぐ国民の間には「巨大な認識のズレ」があると記す。そして、「政策の失敗や人事の失敗、さらに不適切な行動で何らかの問題が表面化すれば、それは朴大統領自身の責任にもなり最終的には大きな政治的打撃となるのは避けられない」と、今年の朴政権の行く末を懸念している。

Text by NewSphere 編集部