“肥満は障害と見なせる”欧州裁の判決が物議 “本当の障害者に侮辱的”との批判も

 欧州司法裁判所は、肥満を理由に解雇されたとする男性の訴えを検討し、肥満が「十分かつ効果的な就労」を妨げているなら、障害と見なされる、との判決を下した。

 男性の体重は約160kgで、保育士として15年間就労していたデンマークの地元自治体から肥満を理由に解雇され、雇用差別を受けたとして訴えていた。欧州司法裁判所は、肥満自体は障害ではないものの、身体的、感情的もしくは精神的問題をきたし就業能力に影響を与えるなら、障害と見なせると判断した(フィナンシャル・タイムズ紙(FT))。

 本判決はEU全体に適用されるが、肥満者を雇用する側である企業は戦々恐々としている。

◆特大サイズの椅子や駐車場の確保
 企業は、特別仕様の椅子や駐車場を確保するなどの調整を行い、言葉によるハラスメントから肥満者を保護する必要もある、とBBCは分析している。

 肥満者のための食事相談や、ジム年間費、在宅勤務などに巨額のコストがかかる可能性もある、とデイリー・メール(DM)は指摘している。体重を理由に従業員を解雇すれば雇用差別と見なされ、企業は多額の賠償金を要求される。

◆食べ過ぎで肥満になっても障害者扱い
 今回の判決で重要なのは、食べ過ぎで肥満になったとしても、障害者として認定されることだ、とDMは指摘している。FTも、「判決が強調しているのは、就業能力を阻んでいる医療事実であり、その原因が肥満であるかどうかは関係ない」と雇用問題専門の弁護士の意見を紹介している。

 自身も肥満であるジャーナリストのHelen Leahey氏は、ワシントン・ポストの寄稿記事の中で、BMIが40以上の病的肥満は、原因が何であれ障害であると述べている。不注意な行動で腰の骨を折った人が障害者として認定されることに誰も意義を唱えない。病的肥満の人も、同様の福祉を享受できるようにすべき、と同氏は主張している。

◆怠惰が障害に認定される?
 欧州裁判所の判決には、海外のネットユーザーからも大きな反響があった(FT、WP、DM)。

・欧州裁判所の判決は、本当の障害を持っている人にとって侮辱的だ
・愚かなことをして腰を痛めた人は自分の状況を変えることはできないが、病的肥満の人はできる
などの意見に多くの人が賛同していた。

 さらに、
・ジャンクフードを食べすぎました、お金ください
・次は怠惰が障害認定されるかも
といった皮肉にも多く共感が寄せられた。

 食事療法や運動で改善できる肥満を、回復の見込みがない他の障害と同列に扱うべきでない、というのが大半の意見のようである。

Text by NewSphere 編集部