「クール・コリア」なぜ成功? “史上最高の国家マーケティング”に海外メディア注目

 日本でも人気となったK-POPカルチャーだが、この流れは今やアジアを超え、世界的潮流となっているようだ。ニューズウィーク誌によると、1990年初めにはほぼ0だったK-POP関連の輸出が、2012年には46億ドルになったという。

 韓国系アメリカ人ジャーナリスト・Euny Hong氏が、K-POPがなぜ世界で成功したのかを解説した書籍「The Birth of Korean Cool」を出版した。英テレグラフ紙、英エコノミスト誌、ビジネスウィーク誌、CNNなど英米主要メディアが同書を取り上げ、ニューズウィーク誌には、著者自身が記事を寄稿している。

 英エコノミスト誌は、Hong氏の「韓国が日本を抜いて、アジアのトレンドの最先端となった。2017年までにK-POP関連の輸出は倍増するだろう」との発言を紹介している。

【K-POPカルチャーの源流はどこに】
 K-POPカルチャーは約20年前から急速に世界に広がった、とHong氏は述べる。これほどまでに世界に広がった源流はどこにあるのだろうか。

 1997年から1998年、アジア経済危機がアジア諸国を襲った。韓国も例外ではなく、韓国経済は崩壊の危機に瀕し、韓国政府はIMFに570億ドルの支援を申し入れた。この原因は韓国がヒュンダイ自動車など、巨大複合企業に頼りすぎたためといわれている。(ニューズウィーク誌)

 当時の金大中大統領は、米国や英国が、映画・音楽産業で巨額の収入を得ていることに注目した。韓国政府は、K-POPカルチャーに10億ドルを投資、国を挙げて育成に取り組み始めた。CNNはその育成方法を下記のように紹介している。才能ある子どもを選抜し、10年以上厳しい訓練を受けさせる。全員が調和のとれた完璧なダンスが踊れるまで、生活、レッスン、食事、睡眠に至るまで集団で訓練する。正確で美しいダンスを身につけてから、デビューさせる。

 またスタッフも一流をそろえているようだ。ニューズウィークによると、「K-POPカルチャーの成功のキーワードは『パッケージ化するスキルに優れ、マーケティングに優れた』こと。歌を書いたのはヨーロッパ人。編集したのは米国で学んだ人。ダンスの指導者は世界中から集まった。まさに一つの企業だ」とその徹底ぶりを紹介している。

【K-POPカルチャーと世界】
 K-POPカルチャーはまず、アジア諸国に広がった。エコノミスト誌、CNNによると、韓流ドラマはフィリピンで人気を博し、タガログ語で再放映となった。「冬のソナタ」はイラク・ウズベキスタンで人気だという。

 ここ10年でこの流れは欧米にも広がった。ニューズウィークによると、2011年4月ラッパーのPSYの「カンナムスタイル」が登場、YouTubeで20億回の視聴を記録した。パリではK-POPのコンサートチケットが15分で売り切れた。Kポップスターのコンサートは6000人収容のホールで、1回しか予定されず、ファンがルーブル広場で抗議したという。

 北米での人気はCNNが紹介している。同メディアでは韓国エンターテインメント会社CJ E&Mの北米支局長の弁として「北米最大のK-POPカルチャーのフェスティバル・KCONは2012年1万人、2013年には2万人、今年は3~5万人を見込んでいる。テレビドラマのスター、タレントコンテスト、スーパーKCON、少女時代やGドラゴンのコンサートもある」との言葉を引用している。

 さらに韓国はK-POPカルチャーブームを利用し、韓国製品の売り込みを図っている。ニューズウィークによると、韓国製コスメは欧米の商品に比べ、アジア人の肌に合うということをうたい文句に掲げ、韓流スターを韓国製コスメの宣伝に利用し、販売促進を図っている。

 冒頭の書籍の発売に合わせて、欧米主要メディアが一斉に同書を紹介しているところを見ると、こちらも周到なマーケティング戦略によるものと言えるのかもしれない。

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Text by NewSphere 編集部