LINE、中国で通信遮断か 中国展開に意欲も、「グレート・ファイア・ウォール」の壁厚く

 7月2日午前8時45分、無料通信アプリ「Line(ライン)」は、中国版ツイッター「新浪微博(シナ・ウェイボー)」の公式アカウントを使い、中国ユーザーのサービスの利用が困難になったと発表した。問題解決に最善を尽くすとしたが、その後、同アカウントからの続報はない。

 Yahoo(ヤフー)とFlickr(フリッカー)も3日、利用できなくなったようだ。

 この件に関して、中国の国務院新聞弁公室(広報担当部局)からのコメントはない。

【広い範囲でネット遮断、再開の見通し立たず】
 中国のインターネット向け監視・検閲プログラムは「グレート・ファイアウオール(防火長城)」と呼ばれている。これを監視する団体「GreatFire.org(グレート・ファイア)」のチャーリー・スミスのペンネームを持つメンバーは、各企業が中国政府の検閲に遭い、情報を遮断されている、と述べた(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。

 ラインの広報担当者は、中国でのサービスがいつ再開できるかわからないとしている。サービスの停止は全てではなく、ユーザーがメッセージを受け取ったということは確認できるという。しかし、メッセージそのものを読むことはできない。

 ZDNetによると、中国では騰訊控股(テンセント・ホールディングス)創設の「微信(WeChat)」が似たようなサービスを提供しているため、ラインはネットユーザーにとってそれほど魅力がないという。ラインは既に全世界で4億人のユーザーを有すると公表しているが、数日前には、市場の大きさに期待し中国国内でのサービスを拡大させるという目標を発表したばかりだった。

【香港の民主主義デモと関係か?】
 情報遮断は、7月1日の午後、香港で民主主義を求めるデモが起きている最中に始まった。中国政府はしばしば、最近の天安門事件の25周年の取締りの時などのように、外国のウェブサイトやスマートフォンの情報を遮断する、とウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。

 中国本土でラインはまだ広く普及していないが、香港ではとても人気のあるアプリだ。ラインを使えば、中国との境を越えて、民主主義運動の情報を簡単に共有することができる。

 中国のネット監視機関が香港のデモの影響を抑制するため、情報のやり取りを取り締まったと推測するのは容易だ、とシンガポール拠点のネットメディア「テック・イン・アジア」は報じている。しかし、香港で広く利用されているアプリ「WhatsApp(ワッツアップ)」は何の問題もなく利用できているようだ。このため、香港のデモとLINEの遮断を関連付けることはまだできない、と同メディアはみている。

 香港はイギリスの植民地であったが1997年に中国に返還され、以降、自治政府が置かれている。中国の最高国家行政機関である国務院は、香港が中国本土の利益に適う指導者を持つべきだと主張していることを、ブルームバーグは伝えている。

 デモでは完全な民主主義を要求し、約50万人という大規模なものだった。香港は、2017年に行われる選挙制度の見直しを検討している。

【海外からの情報流入を警戒する中国政府】
 Google(グーグル)は、先月から検索などサービスのほとんどが利用できない。専門家は、中国政府が、インターネットを経由しての中国国内への情報流入と外国企業への規制を強めているためだとしている(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。

 2012年、習近平氏が国家主席に就任後、中国政府はインターネットの管制を強化している。同国家主席の主導で、中国政府は、ネット規制をすすめるための新しい委員会を設置。ネット上に多くのフォロワーを持つ著名なユーザーに、噂を流布しないよう警告した。また、ポルノ規制キャンペーンを強力にすすめている。

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Text by NewSphere 編集部