中国機、またも異常接近 “アメリカも全面戦争に巻き込まれる恐れ”米専門家懸念

 中国軍の戦闘機が11日、東シナ海の公海上空で自衛隊の偵察機に異常接近した問題で、日本政府は中国側に厳重抗議した。ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)をはじめ、多くの海外メディアがこの政府発表を伝えている。

【中国機はミサイルで武装か】
 防衛省によると、中国軍のSu-27戦闘機2機が、東シナ海上空を通常の警戒監視飛行中のYS-11EB電子情報収集機とOP-3C画像情報収集機に異常接近した。同日午前11時ごろ、後方から来たSu-27がYS-11EBに後方から近づき、追い抜くように30メートル近くまで接近、続いて正午ごろにOP-3Cに約45メートルまで接近したという。

 NYTは、その際、自衛隊機のクルーが、Su-27が機体下部に白いミサイルを抱えていたのを撮影したと報じている。

 中国機による接近飛行は、今年5月24日に続いて2度目だ。菅義偉官房長官は、「非常に遺憾であり、再び起きたことを許すのは難しい。それでも我々は厳格に再発防止を求めた」などと記者団に述べた(ブルームバーグ)。

 抗議は、発生日の夜に在中国日本大使館が電話で中国外務省に行った。また、12日午前には、外務省の斎木昭隆次官が中国の程永華駐日大使を呼んで抗議した。この際、程大使は待ち受けていた記者団に対し、「自衛隊機の方が中国軍機に近づいてきた。むしろ中国側として日本側に抗議した」などと述べたという。

【中国機の行動には全面戦争に結びつくリスクも】
 NYTは、事件が起きたのは両国が主張する「防空識別圏」が重なりあう空域だとし、接近飛行は、そこが中国側の防空識別圏であることを誇示するための行為だとする専門家の見解を紹介した。

 加えて、2001年に南シナ海上空でアメリカの偵察機が中国の戦闘機と衝突した事故を引き合いに出す専門家も多いという。その際は、米中の間で一気に緊張が高まったが、両国の話し合いでなんとか収まった。

 しかし、現在の日中関係は首脳会談が開けないほどに悪化していることから、同様の不測の事態が起きても話し合いで解決するのは難しいのではないかと、同紙は記す。そして、専門家の見解として「このような事件がアメリカも巻き込んだ全面的な軍事衝突にエスカレートする可能性は決して低くない」と記している。

【海外紙は歴史認識問題にも不安感】
 ロイターによれば、小野寺五典防衛相は、来日中のオーストラリアのジョンソン防衛相に「自衛隊のパイロットが危険を感じるほど、中国機は極めて無謀な飛行をした」と訴えたという。

 また、アメリカ国務省のスポークスマンはこの件について、記者団に「全ての国は、(主張などの)違いに平和的に対処するべきだ。海と空で誤算が生じ、より深刻な事態になることを防ぐために、危機管理体制を築く必要がある」と、暗に中国を批判した(ブルームバーグ)。

 このニュースを伝える各メディアは、歴史認識問題を巡る両国の争いにも触れている。ブルームバーグは、中国政府がいわゆる「南京大虐殺」と「従軍慰安婦問題」に関する資料をユネスコの記憶遺産に登録するよう申請し、日本側が抗議した件を伝えている。一方の中国側も日本が「特攻隊員の別れの手紙」を同遺産に申請したことに抗議した点にも触れ、日中間の争いの種が多方面に渡っていることに懸念を示している。

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Text by NewSphere 編集部