日本、欧米制裁対象のロシア下院議長を歓迎 “二面外交”と中韓メディア注目

プーチン大統領

 ロシアを除く先進7ヶ国(G7)首脳会議が、ベルギーのブリュッセルで現地時間4日夜に開幕する。安倍首相も出席する。ウクライナ情勢については、新政権への支援策などで、日米欧で歩調を合わせることで合意する見込みだ。

 一方、これに先立って、ロシアのナルイシキン下院議長が来日し、高村正彦自民党副総裁らと会談した。これがロシアとの関係を崩したくない日本の「二面外交」の表れだと、中国の新華社通信などが伝えている。

【初めて「ロシア抜き」で行われる首脳会議】
 この時期にはもともと、ロシアのソチでG8首脳会議が開かれる予定だった。しかし、3月の段階でロシアを除く7ヶ国がウクライナ危機に抗議して不参加を表明。2日間の日程で行われる今回のG7首脳会議は、そのG8会議に代わって開催が決まった。17年前にG8の枠組みができて以来、「ロシア抜き」で行われるのは初めてだ。

 会議では、包括的な経済、エネルギー問題が議題となる予定。ウクライナ関連では新生ウクライナへの支援策などが話し合われる。ロシアへの制裁の効力を高めるため、石油・天然ガスの輸入でロシアへの依存度が高いヨーロッパ諸国が、調達先の多様化を進めることでも合意する見込みだ。

 また英ガーディアン紙によると、G7首脳は、ロシアのプーチン大統領に、先の選挙で当選したウクライナのポロシェンコ次期大統領と面会し、両国関係の将来について話し合うよう求めている。イギリスのキャメロン首相は、「選挙結果とポロシェンコ次期大統領を強く支持する」とスポークスマンを通じて述べた。

【欧州首脳は個別にはプーチン大統領と面会】
 外交の表舞台はでこうした「ロシア外し」が続くが、裏側ではそうもいかないようだ。ガーディアンなどは、欧州主要国の首脳はG7会議を終えたその足で、フランス・ノルマンディー地方で6日に行われるノルマンディー上陸作戦(D-day)の70周年記念式典の会場などで、個別にプーチン大統領と面談すると報じている。

 AFPは、「(第2次大戦の)東部戦線で血を流したロシアを、D-dayの式典から除外することはできない」と、プーチン大統領の外交手腕と相まって「ロシア外し」は簡単には進まないと指摘する。フランスのオランド大統領は式典前日にパリで、英・キャメロン首相とドイツのメルケル首相は会場で、プーチン大統領と面会する予定だ。

 アメリカのオバマ大統領だけは、公式にプーチン大統領と会談する予定はないとしている。ただし式典では、エリザベス女王らも出席する昼食会で“ニアミス”をする見込みだ。AFPによれば、オバマ大統領は、プーチン大統領が早期にウクライナから手を引き、ポロシェンコ次期大統領の政権の正当性を認めるよう求めており、「キャメロン首相やオランド大統領が、私と同じ考えを彼(プーチン大統領)に伝えることを期待している」と述べたという。

【中韓紙はロシア要人の来日を報じる】
 一方、新華社通信と韓国の中央日報は、プーチン大統領の側近でもあるロシアのナルイシキン下院議長が、今月2日の「ロシア文化フェスティバル」の開会式に参加するために来日し、高村正彦自民党副総裁、森喜朗元首相、伊吹文明衆院議長ら日本側の要人と面会したことを報じた。高村副総裁はナルイシキン議長に対し、ロシアはウクライナ情勢で建設的な役割を果たすよう求めたという。

 中央日報は、ナルイシキン議長が制裁の一環として、アメリカとEUの資産凍結及び入国禁止措置を受けていると指摘。しかし、日本政府が入国ビザ発行を停止した23人にはナルイシキン議長は含まれておらず、「私的な文化行事出席なので問題はない」などと菅義偉官房長官は説明したという。

 こうした日本側のナルイシキン議長への配慮について、中央日報は秋に予定されているプーチン大統領来日へ向けた地ならしだとする見方を伝えている。「日本は米国の目を気にして対ロシア制裁に参加はしたが、クリル列島(北方領土)返還交渉に積極的なプーチン大統領を決して逃さないという安倍首相の意志が見えるということだ」などと記している。

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Text by NewSphere 編集部