“賢い”中国の戦術…米国に介入されず実利 日本のASEAN連携策にも海外紙注目

 オバマ米大統領は28日、陸軍士官学校の卒業式で演説し、ベトナムとの関係悪化を招いた中国の南シナ海での動きなどについて、「同盟国に打撃を与える行動だ。米軍も巻き込まれかねない」などと語った。

 海外各紙は、今後の米軍の動きを示唆する演説の内容を報じるとともに、領土問題で緊張関係が続く中国と日本、東南アジアの動きを解説している。

【オバマ大統領は話し合い路線への転換を示唆】
 ワシントン・ポスト紙は、オバマ演説を8つのポイントに分けて解説。全体を通じて、これまでの軍事介入型から、多国間協議を重視した話し合い路線に転換する意向を示したと分析する。

 オバマ大統領は「我が国は最良のハンマーを持っているが、全ての問題が釘というわけではない」という表現を使い、強力な軍事力だけではデリケートな国際紛争や領土問題は解決できない、という考えを示した。

 対中国については、領土問題を法やルールで解決しようと図るASEAN諸国の動きを支持すると表明した。その上で「ウクライナや南シナ海で起きているような(国際社会の)チェックを経ずに進む地域侵略は、最終的には我が国の同盟国に打撃を与える。さらには、米軍も巻き込まれかねない」と非難した。

【中国はバカなのか?賢いのか?】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、南シナ海と東シナ海でべトナム、フィリピン、日本と小競り合いを繰り返す最近の中国の動きについて、「中国はバカなのか?それとも賢いのか?」という書き出しのコラムを掲載した。

 同紙は、日本がフィリピンへの巡視船の供与を決定し、ベトナムにも同様の支援を検討中だということを引き合いに出し、「中国は隣国同士を(反中国で)結束させるというオウンゴールを犯した」と記す。それが、これまでの自国の外交的努力を無にしたと主張する。

 しかし、「中国は賢い」という見地に立てば、「小さな勝てる戦いを行い、アメリカの権威を少しずつ削っている」という見方もできるという。領有権を争う日本やベトナムに対し、アメリカが出てこない程度のちょっかいを出し続けることにより、「アメリカは頼りならないことを証明しようとしている。それは危険だが賢い戦術だ」と論じている。

【日本は東南アジアとの関係を強化】
 一方、ウェブ誌ディプロマットは、海自輸送艦の東南アジア派遣や、岩崎茂統合幕僚長のミャンマー訪問など、日本の最近の動きを取り上げた。これらは、東南アジアを重視する安倍政権の外交姿勢の表れだと指摘する。

 海上自衛隊の輸送艦「くにさき」は29日、災害下の医療支援などの合同訓練のため、米海軍の130人と豪陸軍の10人を乗せ、米海軍横須賀基地を出港。約2ヶ月かけてフィリピン、ベトナム、カンボジアを回る。自衛艦が100人規模の外国の兵員を輸送するのは初めてだという。同誌は、自衛隊の海外派遣や集団的自衛権の問題を取り上げ、今回のこの動きは「安倍首相が憲法解釈で明確化したい“グレーゾーン”のケースにぴったり合致する」と記している。

 岩崎幕僚長のミャンマー訪問についても、「日本の軍の高官がこの国を訪れたのは戦後初めてだ」と、日本はここに来てミャンマーとの経済的な結びつきとともに、軍事的にも接近していると論じる。そして、日本はこの二面的なアプローチを東南アジア全体で進めていると主張。中国への依存度が強いミャンマーのような国からすれば、日本との関係強化はそのバランスを正す絶好の機会だと分析し、東南アジア諸国側も「日本との関係構築を継続するだろう」という見方を示している。

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Text by NewSphere 編集部