台湾学生、政府譲歩勝ち取るも、提訴される危険残る…海外紙懸念

 中国との「サービス貿易協定」に抗議して、3月18日から3週間にわたり立法院の議場を占拠していた学生が、10日に退去した。100人余りの学生は、黒のTシャツに、運動のシンボルとなったひまわりの花を持って議場を後にした。

【抗議活動の背景】
 今回の抗議活動は、馬政権が慎重な審議を行わずに中国とのサービス貿易協定を発効しようとしたことに端を発した。ウォール・ストリート・ジャナル紙は、「馬総統は、任期終了前に協定を発効することを望み、民衆の賛同を得られていないにもかかわらず、審議を強引に推し進めた」という台湾の識者のコメントを掲載。審議を行わなかったために、民衆の間に広まった、協定が発効しても恩恵を受けるのは大企業だけであり、結局は台湾経済が中国に飲み込まれてしまうのではないか、という不安を払しょくできなかったことが、抗議活動につながったと指摘している。

 結局、今回の占拠は、王金平立法院長(議長)が学生と会い、中国との協定に関して立法府などが監視する法令案が可決するまでは、協定についてのいかなる話し合いもしないという譲歩案を提示したことで終了した。

【残された火種】
 学生率いる抗議活動により、中国との協定に関して監視する法令の作成が約束された。しかし、論争の火種はまだ多く残っている、とニューヨーク・タイムズ紙は指摘する。学生らが提出した監視に関する法案に対し、政府はばかげていると非難。中国との連携を支持する台湾の大陸委員協議会も、学生が主張する「国対国」という関係は、中国政府に喧嘩をうっているようなものであるとコメントしている。

 また同紙によると、政府が、立法院を占拠した学生らを起訴する可能性もありうるという。すでに警察当局が、占拠された建物の被害状況を調査しているという情報もあり、法的な戦いが残されているようだ。

 ただ、王立法院長が、被害状況を小さく見積もり、荒立てることなくうまく処理する可能性もあるという地元新聞記者のコメントも掲載しており、先行きは不透明だ。

【中国の動向】
 ウォール・ストリート・ジャナル紙は、「中国の習近平国家主席は、民衆を刺激しないよう、台湾の情勢を静観している」という識者のコメントを掲載。協定相手の中国は、民衆を刺激してこれ以上の混乱がおこらないよう気を配っていることを示唆している。

 中国系のチャイナ・ポスト紙は、退去前に学生が議場の清掃や修復作業を行ったこと、退場後の学生のコメントを掲載するにとどまっている。

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Text by NewSphere 編集部