河野談話の「作成過程」検証へ 韓国だけでなく、海外紙が懸念する背景とは

 菅官房長官は28日、いわゆる「河野談話」の作成過程を検証する考えを表明した。検証チームを組織し、当時証言した元慰安婦からも聞き取り調査する方針だという。なお談話は、従軍慰安婦制度への旧日本軍の関与を認め、心からの「お詫びと反省」を述べたもの。

【河野談話 検証の背景】
 背景には、談話作成の事務方トップだった石原信雄氏(当時、官房副長官)が、元慰安婦16人の聞き取り調査の裏付けを取っていなかったと国会で認めたことがある。

 さらに、談話の作成過程で、韓国側への配慮から、韓国政府とすり合わせをした可能性にもふれられており、こうした経緯についても調査されるという。

 なお菅長官は3日、談話の作成過程を検証することが、談話の見直しには直結しないという認識を示した。政府の基本的立場は談話の継承だと述べた上で、経緯の不明確な部分について、検証を行うとしている。

【韓国の反発】
 こうした動きに対し、韓国側は反発を強めている。

 1日、朴槿恵大統領は、日本による植民地支配に抵抗して1919年に起きた「3・1独立運動」の記念式典で演説を行った。朴大統領は、日本が談話を見直そうとしている姿勢について警告し、「歴史の真実は生きている人々の証言だ。証人の声を聞こうとせず、政治的利害でそれを認めなければ、孤立を招くだけだ」と述べた。

 朴大統領は、「真の勇気は、過去を否定することではなく、歴史をありのまま直視し、次世代に正しい歴史を教えることだ。歴史認識はその国が向かう方向を示すコンパスである」と述べ、河野談話をふまえてこそ日韓の友好関係も築けるという姿勢を示した。

 また1日には、ソウルの大韓民国歴史博物館で、旧日本軍による従軍慰安婦問題を告発する展示会が始まった。インターナショナル・ビジネス・タイムズによると、慰安婦の苦境をマンガで紹介するほか、慰安所の従業員の日記も展示され、これこそ強制が行われた証拠だと韓国は主張しているという。

【海外紙の論調】
 こうした動きに対し、海外紙は、日本の動きを安倍首相のナショナリズム路線と結びつけて報じている。2007年、当時の第1次安倍内閣は、従軍慰安婦に関し「軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった」と閣議決定を行った。そのため安倍首相が談話見直しに積極的という前提で報じられているといえる。

 また海外紙は、河野談話を「画期的な謝罪」と位置付け、談話を踏まえて、慰安婦が強制されたものであることを、既定事実として報じている。そのためBBCは、日本の保守派が“従軍慰安婦は売春婦だった”と主張している、という例を挙げ、当事者の女性たちや日本の近隣諸国がこれを激しく否定している、と批判した。

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Text by NewSphere 編集部