“銀行預金より得”ネット投資サービスが中国で過熱

 中国で6億人ものユーザーを持つとされる、メッセンジャーアプリWeChatの中国国内版に、ネットで気軽に投資ができる新機能「理財通」が追加された。中国では昨年より、アリババ、百度と、ネットサービスの大手が続々と投資サービスに参入しており、銀行を慌てさせるほどの勢いで巨額の資金を集めている。

【高まるネット投資熱】
 WeChatを運営するテンセントは、1月22日に「理財通」のサービスを開始した。開始から2日も経たず10億元(約170億円)の投資注文があったと、同社は発表している。フィナンシャル・タイムズ紙は、現在ではすでに100億元を上回っているとの見積もりを紹介している。

 昨年6月に、同様のサービス「余額宝」を開始した中国のネット販売最大手・アリババは、1月の時点で、4900万人のユーザーを持ち、2500億元(およそ4兆2500億円)の資金を預かっていることを発表した。台湾のニュースサイト「ウォント・チャイナ・タイムズ」が報じている。

【魅力はなんといっても高い金利】
 これらの投資サービスは、なぜこれほど人気を集められたのだろうか。その理由は、年率換算で7%超(テンセント)、6%超(アリババ)という高い利回りにある。一方、銀行に預金した場合、普通・当座預金などでは0.35%に過ぎない。

 2013年の前半には、銀行の預金総額は9兆元増加したが、ネット投資サービス開始後の同年後半には、3兆元の増加にとどまった、とフィナンシャル・タイムズ紙は報じる。

 これらのサービスにおける投資総額は、現在のところ、銀行の預金総額の1%にも満たない。「しかしすぐに、無視できないほど巨大な存在になるだろう」というアナリストの言葉を、同紙は紹介している。

【テンセントとアリババの一騎打ち】
 WeChatは多数のユーザーを持ち、さらに、多くのモバイル端末に、アプリがあらかじめインストールされている。このことはテンセントに有利に働くが、それでも、アリババの牙城を崩すのは難しい、とウォント・チャイナ・タイムズは指摘する。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によると、アリババは、淘宝(タオバオ)網というオークションサイトと、アリペイというオンライン決済システムを運営している。オークションの落札者は、出品者に直接、代金を支払うのではない。いったん、アリペイの口座にお金を預けておいて、品物が届いた後、問題がなければ、アリペイの口座から代金が引き落とされる、というシステムになっている。

 アリペイは、中国では非常に浸透しており、そのため、多くのユーザーは、アリペイにお金を預けることに慣れている、という。そして、このアリペイから、「余額宝」に、お金を簡単に移すことができる。「余額宝」に投資されたお金は、そのまま淘宝網での買い物に利用できるほか、1日100万元まで、いつでも引き出すことができる。

 一方、テンセントのほうは、お金の出し入れに、銀行の口座を介在しなくてはならない。

「テンセントが提供する利回りはとても魅力的だけど、簡単にネットショッピングで使える『余額宝』ほど便利ではない。テンセントがこの先もこんな高利を提供するのか、あるいはアリババより便利なサービスを提供するか、様子を見たい」という、北京在住の「余額宝」ユーザーのコメントを、同紙は紹介している。

アリババ帝国 ネットで世界を制するジャック・マーの挑戦

Text by NewSphere 編集部