中国、日本以外と関係改善図る 今後の展望に海外も悲観的

 安倍晋三首相は12月26日、過去7年間では初めて日本の首相として、靖国神社を参拝した。中国、韓国は、14人の戦争犯罪人が祀られているとして、同神社への首相による参拝には反対の立場を明確に示してきた。アメリカも「近隣国との緊張を高めるような行動をとったことに失望している」と指摘した。

 安倍首相の靖国参拝に、中国と韓国は予想通りの激しい反応だった。中国の報道官は、「侵略行為を美化しようとしている」と非難。靖国神社に祀られている戦争犯罪人を、「アジアのナチス」と呼んだ。韓国は、「深い悲しみと激しい怒り」を表明。日中が対立する問題で明確な立場を示すことのまれなシンガポールでさえも、参拝に「遺憾」の意を示した。

 2014年、日本のアジア外交はどうなるのだろうか?上記を念頭に、海外各紙がそれぞれ分析している。

【安倍首相の賭け】
 アメリカは安倍首相の行動に困惑し怒っている、と英エコノミスト誌が報じている。ただ、発言内容の全体はそれほど厳しいものではないとも指摘している。

 同誌は、安倍首相が韓国と中国の威嚇は全く無意味だとさえ考えたのでは、と推測している。実際、安倍首相の靖国参拝により、韓国の朴槿恵大統領は今後一切安倍首相と会談を持つ可能性を排除し、アメリカも日韓関係を不安視しているが、国民や企業にはあまり関係がないようだ。

 また中国政府も今のところ、反日運動を煽ったり貿易制裁を課したりすることもしていない。超国家主義で知られる中国国営グローバル・タイムズ紙でさえ、参拝を非難する論調はいつも通りだが、大規模な経済制裁を求めてはいないという。

 エコノミストは、安倍首相の靖国参拝という”賭け”は、今のところほとんど損失なく済みそうだとみている。なぜなら、今回の首相の行動は憲法改正への明らかな意思表示だが、その時期はよく計算されたものだからだという。同誌は、中国が9月に防空識別圏(ADIZ)を設定し独断的な行動に出たことで、首相は自身の国家主義的目的をカモフラージュできたのではと指摘している。また、首相は就任後1年間で東南アジア諸国10ヶ国を訪問し、12月東京で開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)会合では飛行の自由に関する共同声明を発表するなど、中国に対抗する日本へのある程度の支持に後押しされたとも言えるとしている。

 中国の勢力拡大への不安が、多くのアジア諸国・アメリカが安倍首相の挑発的な行動を容認する素地を作ったが、今後も許されるとは限らないと警告している。

【日本と中国】
 世界がよく認識しているように、日本は過去に侵略と暴虐を犯した責任がある、と英ガーディアン紙は報じている。同紙は、安倍首相の靖国訪問に対する中国の怒りは、歴史的過去から、ある程度の道理がある、としている。しかし中国が日本を非難する一方で、日中の領土問題に関する自国の軍事行動に触れようとはしない、と指摘している。中国は、日本の防衛費の増加と自衛隊の活動拡大に怒りを表明しているが、ADIZの問題を同じ目線では計ろうとしていない。このため、日中両者に非があるだろうと判断している。

 中国は長期的な経済成長のため、2014年は多くの外国と関係改善に望もうとしている、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。ただし、日本は例外だという。専門家は、日中の「対立は続くだろう」とし、日本と中国は危機回避のための話し合いの窓口を設置するべきだと意見している。一方で、期待される明るい材料として、2014年に中国で開催されるアジア太平洋経済協力(APEC)会議を挙げている。首脳会談の可能性、そうでなくとも日中首脳が廊下で何らかの会話を交わすのでは、との期待を報じている。

Text by NewSphere 編集部