月の資源は“早いもの勝ち”? 中国、月探査計画に巨額投資

 14日、中国の月探査機「嫦娥(じょうが)3号」が予定どおり月面軟着陸に成功した。着陸機から発進した探査車「玉兎号」が今後3ヶ月間、地質構造や資源を調査する。

 月探査計画の馬興瑞総指揮は「嫦娥3号の任務は大成功した」と表明した。

 探査機の月面軟着陸は旧ソ連による1976年以来約40年ぶりで、中国はアメリカ、旧ソ連に続いて3ヶ国目となる。

【習政権の狙いは、核融合発電用のヘリウム3などの資源獲得か】
 中国の月探査計画である「嫦娥計画」は大きく3段階に分かれており、今回の嫦娥3号の軟着陸は第2段階となる。第3段階では月面からのサンプルリターンが計画されており、2025年までに有人の月面探査も計画されている。

 一部の科学者は、中国の月への関心は完全に商業目的だと指摘する。月面には未来の核融合発電の燃料となるヘリウム3などが大量にあるとされ、これらの資源獲得が狙いだという。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「有人宇宙飛行は高価でリスキーで真実みに欠けるため、栄光よりも商業性を求め始めるだろう」という、元アメリカ航空宇宙局のアレックス・ローランド氏の見解を掲載した。また、同計画に巨額を支出する価値があるのかとの批評も報じた。

 一方フィナンシャル・タイムズ紙は、宇宙計画からの科学的な見返りはあまりないと指摘した。2008年に中国から打ち上げられたナイジェリアの通信衛星は、太陽電池が切れて失敗。先週にはブラジルと共同開発した地球資源衛星の打ち上げを予定軌道に乗せることができなかった。

【アメリカは世界最大の人口を持つ中国の台頭を懸念】
 習近平国家主席は、「中華民族の偉大な復興という中国の夢の実現」とのスローガンを掲げている。今回の月面着陸で宇宙計画の急速な進化を誇示し、国際社会で、アメリカなどとならぶ「宇宙大国」としてふるまうと考えられる。

 対するアメリカは、世界最大の人口を持つ中国の台頭をますます懸念しているとフィナンシャル・タイムズ紙は報じた。今年、アメリカ航空宇宙局(NASA)がスパイ行為防止のため、中国籍の研究者の会議出席を禁止。また、予算と安全性の懸念から有人宇宙活動から撤退し、火星探査車の活動に移行している。

 北京大学地球・宇宙科学学院の焦維新教授は、人民日報傘下のグローバル・タイムズ紙に対し、「月計画は、欧米メディアが報じた経済的目的よりも、主に科学的な目的に焦点を当てている」「技術とコストを考えると、近い将来、月の資源からどこかの国が利益を得るのはまだ非現実的だ」と語ったという。

 一方、中国科学院国家天文台の劉建忠研究員は中国版ツイッター「ウェイボー」で、「月の資源を最初に開発できた者が利益を得るべきだ」と述べたと同紙は報じた。

 「ウェイボー」でのコメントは歓迎派がほとんどを占めている。ただ、中には「年金制度が不十分で、定年退職が65歳に引き上げられることを考えると、誇りに思えない」との皮肉な意見もあったとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じた。

Text by NewSphere 編集部