中国の勝ち? バイデン米副大統領、会見で防空識別圏に触れず

 日中韓歴訪中のバイデン米副大統領は4日、北京で習近平中国主席と会談し、会議や夕食など5時間半を過ごした。バイデン副大統領は、習近平主席と個人的に親しいとされている。

 しかし期待されていた防空識別圏問題については、特に具体的な進展はなかった模様だ。バイデン副大統領は前日、日本では中国の防空圏宣言を批判しており、日本側の失望を呼ぶ事になりそうだ。

【当たり障りのなさすぎる発表内容】
 会談後、バイデン副大統領は記者会見で、「あなた(※習近平主席)はチェンジが世界で起こり、チャレンジが続くと指摘しました」「しかし私は、チャレンジが機会をくれると信じて育ったのです」などと語った。

 習近平主席は、アジア情勢が「深遠で複雑な変化」を遂げつつあると警告する一方、来年が米中国交回復35周年であることに触れ、「世界は、全体として、平穏ではありません」「協力と対話を強化することが、我々両国が直面する唯一の正しい選択です」などと述べた。

 だが、ともに防空識別圏については言及しなかった。会談で触れられはしたようであるが、習近平主席はこれについて何も約束はせず、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、バイデン副大統領の要求を「考慮すると表明した」のみだという。米側の出席者の一人は「これは、中国次第です。私たちは、物事が今後数日から数週間でどう展開するかを観察します」と述べている。同紙は、「通常の外交プロトコルに従うなら彼はよくやったのですが、これは正常な外交状況ではないのです」との専門家の評価を伝えた。

 会談では他に、北朝鮮、イラン、経済、日中間などでのホットラインの必要性、などが話題になったと報じられている。バイデン副大統領は、イラン問題の前進は経済制裁、対話、国際的圧力の組み合わせによる成果であり、これが北朝鮮にも効くはずだと中国側に説いたという。

【中国人の感想は】
 同紙は、「家族経営の食堂で昼食の麺をすすっているところを見せてオンラインコミュニティを魅了した」2年前の前回訪問に比べ、中国ソーシャルメディアはバイデン副大統領を冷遇したと評している。また、会談後の公式声明で防空識別圏について触れられなかったことはすなわち、中国の地位が上昇しているサインである、と考えるインターネットユーザーも居るという。

 ワシントン・ポスト紙は、バイデン副大統領が北京の米領事館にも立ち寄り、渡航申請中の中国人たちについて、米国に到着したら「革新は、自由に息ができ、政府に挑戦でき、宗教指導者に挑戦できるところにのみ発生するのだと知る」ことを望む、と発言した。米国で昨春、同様の発言をした際は、中国を侮辱していると思った中国の学生から批判を招いたと同紙は指摘する。

 一方、フィナンシャル・タイムズ紙は、防空識別圏問題さえなければ日中の経済関係は改善しつつあったはずで、中国指導部は軍部と経済の両方から板挟みになっている、との専門家の見方を伝えている。

Text by NewSphere 編集部