ハッキング疑惑、不透明性・・・ 中国企業の原発参入に英メディアが懸念

 中国訪問中のオズボーン英財務相は17日、中国企業が英国内の原発建設・運営に参入することを認める方針を明らかにした。また、英国は規制手続き上の支援も行うという。原発輸出ビジネスの開拓を狙う中国にとっては、実績作りのチャンスになりそうだ。

 英国は、サマセット州ヒンクリーポイントに計画中の新原発について、仏EDF社と交渉中であったが、EDF社は膨張しつつあるコストを分担する狙いで、中国広核集団CGNPCをプロジェクトに引き込んだようだ。当初、CGNPCはEDFよりも少数株主であるが、将来的な過半数取得の可能性も妨げられるものではない。

【安全および戦略上の不安】
 各紙は、施設そのものの品質については触れていない。また、オズボーン財務相は厳格な安全基準の義務付けを約束している。しかしガーディアン紙は、中国企業の透明性の低さから、運営業務に監視が行き届くのか不安視している。

 腐敗防止団体トランスペアレンシー・インターナショナルによるBRICS新興諸国75社の調査でも、中国企業は、財務情報や企業構造などの情報公開性が最も低かった。調査対象となった33中国企業は、どれひとつ、贈賄禁止を公式表明していない。

 英政府の原子力顧問ジョン・ラージ氏さえも、フランス企業でも英原発の操業にあたっては、両国間の規制制度の違いから問題を生じるおそれがあるのに、独立した監督者がいない政府直轄の中国企業となれば、問題は一層深いと懸念する。

 さらに、原発のような重要インフラ施設をハッキング疑惑が取り沙汰される中国に任せることは、戦略的に危険だとの指摘も挙がっているとガーディアン紙は報じている。

【本当に安上がりなのか】
 オズボーン財務相は、英国にとって「投資と雇用」「長期的なエネルギーコスト低下」という潜在的メリットを強調している。

 しかし英政府の契約交渉の結果、ヒンクリーポイント原発から生成される電力には価格保証が付けられる。テレグラフ紙によれば現在の卸売相場の1.5倍となる、1メガワット時あたり90~93ポンドである。フィナンシャル・タイムズ紙は2倍とも報じている。35年とされる同原発の寿命の間、この負担が国民に掛かり続けることは、財務相の言うメリットへの疑問につながっている。

 さらに、EUでは国から電力会社への直接補助金を認めていないため、契約に認可が下りるかどうかにも不安があるという。

Text by NewSphere 編集部