メルケル独首相、「圧勝」したのに苦しい理由

 22日のドイツ連邦議会(下院)総選挙で、メルケル首相のキリスト教民主同盟CDU、およびバイエルン州の姉妹党であるキリスト教社会同盟CSUが、合計で得票率41.5%、630議席(改選前622議席から改定)中の311議席を獲得し、第1党となった。2009年の前回選挙の33.8%から議席を大きく伸ばし、過半数に迫る勢いだ。

 第2党は社会民主党SPDの192議席(25.7%)である。その他、緑の党が63議席(8.4%)、残りの64議席が左翼党となっている。

 現在CDUの連立パートナーである自由民主党は得票率4.8%で、5%の最低議席要件に届かず、現93議席を丸ごと失った。欧州統合懐疑派の新党「ドイツのための選択肢」も4.7%で、議席獲得はならなかった。

【自動的に左右大連立以外ありえず】
 各紙は、与党が単独過半数を得たことは1957年以来ないことを強調し、それに迫る大勝利だと報じた。メルケル首相の3選は確実で、4年間務め上げれば、女性首相として、サッチャー元英首相の長期就任(11年半)を追い抜くことになる。

 メルケル首相は、ヨーロッパには安定が必要だと述べて、単独支配ではなく連立政権を目指す考えを明らかにした。しかし各紙は、先行きを不安視している。CDUは中道右派政党、CSUも保守政党だが、他に議席を得た党がいずれも左派しか存在しないためだ。

【連立交渉の行方】
 左派3党のうちでは、最も有力視されているのはSPDとの連立である。SPDは16州議会のうち9州を押さえており、直接選挙制ではなく各州選出である連邦参議院(上院)の過半数を握っているのも旨みだ。

 しかし、ギリシャ救済における緊縮路線、富裕層増税、在宅母親への補助金、外国人からのフリーウェイ料金徴収、財務相ポストなどの問題で、両派間には不一致があるとされる。さらに、SPDは2005年から2009年の間にもCDUと連立を組んだが、その後の選挙で惨敗したこと、現在CDUのパートナーである自由民主党も今回壊滅に追いやられたことで、SPD内には恐怖感があるようだ。

 連立を組めばCDUより格下のパートナーとなってしまうSPDは、連立に応じる用意は一応あるが、さほど魅力的に感じてはいないと報じられている。SPDは27日の集会で今後の方針を協議する予定である。

Text by NewSphere 編集部