景気悪化阻止か、「市場への裏切り」か? 海外紙のバーナンキ評価とは

 米連邦準備制度理事会(FRB)は18日の政策会議で、毎月850億ドルの資産購入プログラムを継続する判断を、9対1の賛否で可決した。低金利政策についても据え置きとなる。

 FRBは5月、景気回復を理由に、資産購入プログラムを段階的に廃止する可能性を示唆していた。その表明は世界の各種市場に大きな影響を与えており、今回の政策会議が注目されていたが、その影響自体のせいもあってか予想ほど景気回復が強くならなかったことや、政治上の財政問題の不安によってFRBが「怖気づいた」、などと各紙は評している。

 ただし、FRBは今後の情勢次第で年内にも再度、政策見直しを行う可能性を示唆している。

【期待にこたえられないデータ】
 2013年のGDP成長は、6月の2.5%との予想に対して、2.2%と下方修正された。2014年についても、6月予想3.3%が3%となった。

 失業率は1年前、プログラム導入前には8.1%だったものが、8月には7.3%へと下落している。しかしこれは労働力が流出して労働人口が減ったせいだとも指摘されている。8月の雇用創出実数としては16万9千で、平均9万7千程度だった昨年より改善してはいるが、回復は鈍化しており、市場の期待には及ばなかったという。

 住宅業界は、8月の信頼感指数は2005年11月以来の最高になるなど好調に見えるが、提出されている着工申請が少ないなど、今後の失速を示唆している。7月には横ばいだった鉱業、鉱山および電力は、8月には0.4%した。小売は0.2%増で、期待に及ばなかったが、自動車業界は予想を上回って好調であった。

【翻弄される市場】
 全体に景気回復が予想ほど加速していないという原因にも関わらず、FRBの政策維持決定を受けて株価や金などは高騰し、プログラム廃止懸念で上昇傾向にあった国債金利は再び低下した。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、米国ではここ数日、政策的な市場への裏切りが相次いでいると指摘する。シリア攻撃中止や、次期FRB議長候補サマーズ氏の辞退、そして今回のプログラム縮小中止である。

 さらに今後、9月中に通過させなければ政府機能の一部停止を招く来年度予算案や、やはり10月中旬に通過させなければ公務請負業者などへの支払い滞納を招く、連邦債務上限引き上げ法案について、民主・共和両党間の政争が予想されているのも、不安材料であるという。

 また同紙は、バーナンキFRB議長自身、失業率の経済指標としての意義について、記者会見での発言が自己矛盾していると指摘。市場が右往左往しているのに「バーナンキは何も約束していない」、「FRBが投資家を混乱させたかどうかを尋ねられて、気色ばんだ」などと、その姿勢を批判している。

Text by NewSphere 編集部