イスラエル・パレスチナ和平交渉再開 海外紙が悲観的な理由とは?

 ケリー米国務長官は19日、イスラエルのネタニヤフ首相とパレスチナ自治政府のアッバス議長が、和平交渉再開の準備を進めることに合意した、と発表した。
 発表によると、すべてが予定通りに進めば、来週にも双方の代表がワシントンで協議を行う予定のようだ。
 さらにイスラエルは20日、和平交渉に向け、パレスチナ側が交渉再開の前提条件のひとつとしているパレスチナ囚人の一部釈放を発表した。

 両者の中東和平交渉は、2010年秋にヨルダン川西岸と東エルサレムのイスラエルの入植活動を巡って決裂した後、開かれていない。
 和平交渉へ向けてのイスラエル・パレスチナ双方の動きを、海外各紙が報じている。

【指導力が問われる両国首脳】
 交渉再開のためには、保守政権を率いるネタニヤフ首相と、政治的指導力が不足しているアッバス議長の手腕が問われる、とニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

<イスラエル>
 ネタニヤフ首相は、交渉再開にはまず政府内協議で大多数の合意を得る必要があるとしている。しかし、これが内閣全体を指すのか、国の安全保障に関係する限られた大臣たちなのか、はっきりしていない。首相は多くの反対意見が存在していることは認めており、合意形成の行方が注目される。
 アルジャジーラによると、ネタニヤフ首相は20日、「話し合いは、パレスチナとの軋轢を解消するだけでなく、イランの核の脅威、隣国シリアの内紛の悪影響を排除するためにも有効だ」と理解を求めた。
 一方シュタイニッツ戦略担当相は、国境確定交渉や入植活動の凍結は前提条件にしない方針であることを強調している。

<パレスチナ>
 ガザ地区を支配するイスラム原理主義組織ハマスは、イスラエルとの2国間協議は非常に危険だとみているようだ。
 ハマスのアブズフリ報道官は、「交渉再開はパレスチナ人民が認める条件と矛盾する」とアッバス議長の決定を非難した。他の政府関係者からも、交渉は、占領を認め、入植地の拡大を許すことになるだけだ、などと批判的な声が挙がっているようだ。

【EUの圧力でイスラエルが譲歩?】
 では、なぜこのタイミングで和平交渉の機運が高まっているのか。
 フィナンシャル・タイムズ紙は、中東問題に関して強硬な態度を続けるイスラエルが、政治的にも経済的にも孤立する不安を抱えている、と指摘している。
 実際、EUは先週、イスラエルの違法な占領に反対の姿勢を明らかにするため、ヨルダン川西岸、東エルサレム、ゴラン高原に拠点を置くイスラエルの機関・団体への援助を停止する指針を発表した。
 さらにEUは、占領地で生産された物品の輸入制限をすすめる動きもみせているという。EUはイスラエルにとって最大の貿易相手である。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、例え2国間協議が再開されても、ネタニヤフ首相が譲歩するとは思えないし、その強硬な態度をアッバス議長は受け入れるわけにはいかないだろう、と悲観的な推測を報じている。

Text by NewSphere 編集部