米国vs中国、サイバー攻撃めぐる戦いの行方は?

 今年の米中戦略経済対話が終了し、両国は投資協定や環境対策などの面で進展を見た。しかしハッカー問題やスノーデン事件については、なおも両国の対立点であり続けている。

【投資協定のブレークスルー】
 両国は投資障壁を削減する二国間投資協定について、2008年から議論を始めていたが、これまで進展ははかばかしくなかった。
 しかし今回、協議の再開が合意された。ルー米財務長官は、「中国が別の国と、投資の全部門・段階を含む二国間投資協定交渉に初めて合意した」ことは「重要なブレークスルー」であると評価し、米財界も歓迎していると報じられている。
 ただ、フィナンシャル・タイムズ紙は、中国側には外国投資を禁止している分野が多く存在することや、逆に中国による米スミスフィールド・ポーク社の買収などが米議会で不安視されている現実も指摘する。
 また中国企業からの技術移転要求や、明白な中国国営グループびいきなどの可能性も懸念している。

【2大排出国の環境対策】
 ニューヨーク・タイムズ紙は、環境対策での協力合意についても報じた。両国は二酸化炭素の2大排出国であり、かつ国際的な気候変動会議でしばしば対立してきたが、大型車両からの煤塵および二酸化炭素の排出削減、ビルや工場のエネルギー使用量削減、排出に関する正確でタイムリーな情報公開、より効率的なエネルギー伝達システム促進、といった面での協力が合意された。
 また、化石燃料発電所からの排出二酸化炭素を回収、貯蔵、再利用する方法の研究についても、今後の協力が報じられている。
 同紙は、協定に法的拘束力はなく、排出量の目標も設定されていないが、近年ほとんど進展がない国連気候変動会議にとって、両国の協力姿勢はムード改善につながると期待している。

【諜報の暗闘】
 一方で米企業などへの組織的な中国ハッカー侵入や、米側の機密諜報作戦を告発したスノーデン氏の引き渡し問題については、なおも両国関係への懸念材料だと報じられている。
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は今年初め、米政府がインターネットプロバイダに対し、中国ハッカーと疑わしいIPアドレスを提供していたことを報じた。その際は一時的に侵入減少の効果が確認されたが、現在、中国ハッカーとみられる活動は衰えていないという。そして米国政府は従来、中国ハッカーに正面から立ち向かうことには外交上の理由から及び腰であったが、今年からいよいよ強硬路線に踏み切ったと報じられている。
 なお同紙は、正当なトラフィックまで妨げてしまう懸念や、スノーデン氏が暴露したような違法性の疑われる政府諜報活動への協力と映る懸念から、プロバイダとしては法的なお墨付きが与えられない限り、特定IPアドレスの無条件遮断のような強硬な対策には踏み切りにくいと指摘している。

Text by NewSphere 編集部