ブラジルデモ、大統領が「政治改革」提案 収束なるか?

 ブラジルのルセフ大統領は24日、デモの主催者らと面談した。依然として続いている大規模デモの鎮静化を図り、広範囲な政治改革に関する国民投票の実施を提案した。デモ隊の主な要求の一つである、政界汚職の厳しい取り締まりなどに言及した。
 1992年にも、フェルナンド・コロール元大統領の汚職を理由に抗議デモが行われていた。しかし元大統領は議会に復帰している。
 また、最高裁判所は今年、票買収で24人の政治家に有罪を宣告しているが、誰一人刑務所に行かなかったことをウォール・ストリート・ジャーナル紙は指摘している。
 
 ただ、ある党首は、政治改革に対するルセフ大統領の話は、ありふれており中身がない、と懐疑的態度であるとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。

【社会に還元されないサービスに爆発】
 抗議デモにつながった国民の不満の一つに、高い税金の一方、公共サービスや医療、教育の質が低いことがあげられている。
 例えば、2000年代には、初等教育を終える年齢の子供の4割近くが留年や退学している。公立学校の教育レベルが低い一因には、教員の賃金が低く質も低いことが挙げられている。無資格教員も30万にのぼるという。実際、デモ隊の要求の一つに、教員の賃上げもあがっていた。
 ルセフ大統領は、公共交通システムに220億ドルを割り当て、医療や教育に融資資金の追加を行うと表明した。医療改革では、窮地に立たされている公的病院や過疎地への派遣など、医師不足を補うためキューバなどの海外から輸入計画を提案している。ただ、国内の医師団からは反発を受けている。

【トルコとブラジルの抗議デモに対する対応は】
 ニューヨーク・タイムズ紙は、トルコとの抗議デモへの対応の違いを報じている。
 トルコのエルドアン首相は、デモ隊に強硬姿勢で臨んでいるが、ブラジルのルセフ大統領は、デモ隊と話し合いの場を設け、解決に向け協議する融和姿勢を打ち出しているとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

 大きく違う点は、トルコの抗議デモは首相に対する反発であるのに対し、ブラジルの抗議デモは大統領自身には大きな不満はなく、政治体制に対する抗議である点だ。

 同大統領は、抗議デモを政治改革の追い風ととらえており、「就任以来、多くの障害物が立ちはだかっていますが、街頭からのエネルギーはどんな障害物よりも大きいです」とウォール・ストリート・ジャーナル紙の取材に述べている。

Text by NewSphere 編集部