発展に期待集まるミャンマー それでも、浮き彫りになるリスクとは?

 2011年3月、軍事政権に終止符を打ったミャンマーでは、テイン・セイン大統領の就任と共に民主化を進めてきた。ここ1年では、新投資法や新メディア法などの法整備をはじめ、広範囲に及ぶ変革を行なってきた。今後は積極的に外資系企業を受け入れ、経済発展を遂げていきたいところだ。
 しかし、政府の積極的な動きとは裏腹に、国内では未だ宗教対立が続いており、投資誘致の妨げとなりかねないことが懸念されている。
 海外紙では、最近も勃発した暴動や、不安定な国内情勢が引き起こしうるリスクについて報じている。

【少数民族をめぐり宗教間衝突が発生】
 28日から2日間、北東部シャン州ラショーで、仏教徒とみられる青年らが、こん棒や鉄棒を振り回しながら、イスラム教の少数派であるロヒンギャ民族地区のモスクや宗教学校、店舗、民家などに放火するなどの暴動を起こした。
 発端は、イスラム教徒の男性(48歳)が、ガソリン販売を営む仏教徒女性(24歳)にガソリンをかけて火を付けた事件にあるとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。男性は警察に逮捕されたものの、怒った仏教徒ら80人程が警察署に押しかけ、男性の引渡しを要求したが受け入れられずに、今回の暴動に至ったと予測されている。

 同紙によると、ミャンマーを訪れていたイギリス人観光客は、ホテル内でこん棒を持った100人ほどの集団と遭遇し、そのうち1人が「全てのベンガル人(=ロヒンギャ民族)を殺す」と意気込んでいたと話しているという。
 またニューヨーク・タイムズ紙は、フィンランド人観光客の証言を取り上げている。それによると、警察は暴動が起きてから2時間後に到着したものの、数分間後には退去。夜になってから大人数の集団でやってきたものの、道を閉鎖した以外、暴徒を取り締まることはなかったという。

 ロヒンギャ民族は、ミャンマーとバングラディシュの国境付近に住む先住民族で、少数派であることなどから、両国民から不法移民として弾圧されてきた。ロヒンギャを含むイスラム教徒は、ミャンマー人口の5%程度だが、大きな街などでは、その存在感は小さくないという。

【国内治安悪化とともに投資も遠のく?】
 宗教間の衝突が続くミャンマーの今後の発展に対して、コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーは、政府が治安の安定を実現できなければ、海外投資が遠のくリスクがあると警告する報告書を発表した。
 同社によると、ミャンマーの経済規模は2030年までに4倍以上の2000億ドル(約20兆2000億円)にまで拡大する可能性があるという。
 しかし、その実現には、インフラ設備や経済の多様化が不可欠であり、膨大な外国資本が重要となってくる。今後20年間で年間成長率8%を達成するために、計3200億ドルの投資が必要な計算だという。

 民政に変革後、多くの外資系企業が視察に訪れているが、いずれも慎重で暫定的な動きにとどまっているようだ。
 例えば、前述の衝突事件が起きた地域では、中国へのエネルギー輸送を行うパイプラインが建設されている。今のところパイプラインに対する攻撃はないというが、治安が安定しないうちは、外国企業の不安も払拭されないだろうと、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は指摘している。

 また来月には同国で、世界経済フォーラムアジア会議が開催される事となっている。諸外国へ向けてどれだけ説得力のある経済成長計画をアピールできるかが注目される。

Text by NewSphere 編集部