オバマ大統領、「テロとの戦い」新指針発表 その評価と課題とは

 オバマ米大統領は23日、対テロ戦略に関する新たな政策を明らかにした。
 引き続きテロから自国を守る努力は必要だとしながらも、民主主義国家として戦いを終了させていかなければならないと述べた。具体的には、無人機攻撃の対象を、「国益に重大な脅威」から、「米国民に対し継続的かつ差し迫った脅威」となる場合に限るとして、基準を引き上げた。さらに、無人機運用の役割をCIAから国防総省に移管するという。
 また、国際テロ組織アルカイダの指導部はほぼ消滅しており、グローバルな戦いの山は超えたとの認識を示した。
 海外各紙は、テロ対策に関する大幅な法的・道徳的枠組みの変化を報じるとともに、曖昧さが残る具体的な工程や問題点などを指摘している。

【運用制度の変更は好ましいが、なお疑問点も】
 オバマ大統領は無人機運用を厳格化するとしているが、今後も無人機による作戦に重点を置いていく方針を打ち出している。しかし、これまでの戦況からも、無人機による超法規的な殺害が新たなテロリストを生み出している、との批判が挙がっているとフィナンシャル・タイムズ紙は指摘している。
 大統領も「米国が考え方や行動を見直さなければ不必要な戦争まで引き起こしてしまう可能性がある」と認め、指針を厳しくすることで無人機攻撃による民間人の犠牲がなくなることが「ほぼ確実でなければならない」と言及している。英国の調査報道局によると、2004年のブッシュ政権時代からCIAが実施してきた無人機攻撃によって最大3,500人が死亡し、そのうち民間人は884人だったという。
 政府は殺害よりも捕獲を優先するとしているが、戦場での捕獲作戦はほぼ不可能という見解の下、実際には無人機による殺害者のほうが多いとニューヨーク・タイムズ紙は指摘している。
 さらに、CIAからの権限移管についても具体的な工程は明らかにされていない上に、他組織に移管したところで、無人機にまつわる問題は解決されない、と各紙は冷静に報じている。

 一方フィナンシャル・タイムズ紙は、今回の変更で、「テロリストに特徴的な行動パターンによって人物の危険性を判断する『識別特性爆撃(signature strikes)』」がなくなることは重要だと評価している。これについては、パキスタンで、「武器を持ち歩く」などの行動パターンだけで危険性を判断し、殺害許可をしてきたことが問題視されていた。

【被害国の市民を脅かすも、米国民は肯定的】
 タイムズ社の世論調査によると、米国民の間では、海外における対テロ作戦に無人機を使用することは高い支持を得ているようだ。政界では、共和党79%、民主党64%、無党派71%が支持しているという。
 一方、米国民に対して無人機を使用するとなると、全体の支持率は41%となる。国内での無人機使用に賛成なのは34%で、国内の米国民に対する使用は20%が支持しているに過ぎないという。

 実際に無人機攻撃を受けているパキスタンやイエメンなどでは、一般市民も恐怖に怯えているという。今では「米国=頭上を跳ぶ無人機の脅威」と連想されることが多く、人々のトラウマになっているとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。パキスタン政府は、オバマ氏の演説を受けて、「無人機攻撃は無実の市民を犠牲にしており、人道的に問題があり国際法にも反している」と批判している。

Text by NewSphere 編集部