マイクロソフトに680億円の罰金 背景にある当局側の不手際とは?

 欧州委員会は6日、独占禁止に関する合意条件に違反したとして、米マイクロソフト社に5億6100万ユーロ(約683億円)の罰金を科す決定を下した。
 背景として、マイクロソフトは2009年に、EU諸国で提供されるWindows PCに関し、2014年までブラウザの選択画面を表示することでEU当局と合意していた。当局は同社のWindowsOSとInternetExplorerブラウザの「抱き合わせ商法」問題を懸念していたため、この合意では、GoogleChromeなどの他社製ブラウザも含めた製品のなかから、ユーザーが選択できるようにすることが求められていた。しかし、2011年2月から2012年7月までに発売された「Windows7」搭載のマシンにおいて、この合意が反故にされ、ブラウザ選択画面が表示されない状態だったという。
 マイクロソフトは、故意ではなく技術的なエラーであると主張した。規制当局は捜査への協力的態度を認めて、最大で同社年間売上の10%の罰金を科す可能性もあったところ、1%で済むこととなった。

 しかし各紙はこの件に対し、マイクロソフトよりも規制当局の不手際に注目している。
 そもそも規制当局は和解遵守状況の報告をマイクロソフト任せにしており、件のブラウザ選択画面が表示されない機種にも気づかず、2012年7月にグーグル社の指摘を受けて初めて事態が発覚したのだという。発覚が遅れたことで、影響は1500万人以上の購入者におよんだとみられる。各紙は変化の速い技術市場で大企業を監視する難しさを懸念している。
 他にも、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、独禁法違反のガイドラインはあるのに罰金額の算定ルールが不明確だと指摘。ニューヨーク・タイムズ紙は、2003年以降29件の和解事案の大半において、当局は適切な外部監査人を見つけられなかったと指摘した。

 こうした指摘に対し、当局のアルムニア欧州委員(競争担当)は不手際を認めつつ、長引きがちな法廷闘争に対し「和解」は迅速な解決手段であることや、このような罰金には他社への見せしめ的な意義があることを主張している。

 なおグーグルも、検索機能が自社関連サービスをライバル会社の情報より優先的に表示しているのでは、と当局から懸念されており、こちらの行方も注目されている。なおアルムニア委員は、その件と今回のマイクロソフト社の件との関連はないと否定している。

Text by NewSphere 編集部