若返りを図るキューバ、その前途はいかに

 キューバのラウル・カストロ国家評議会議長はこの度、2期目の再任が決定すると共に、これを最後に退任する意向を明らかにした。任期を終える2018年には同氏は86歳となる。また、第1副議長にはミゲル・ディアスカネル氏(52)が選出され、後継候補に若手が初めて抜擢されたことに注目が集まっている。
 海外各紙は、キューバ革命世代の老齢化と、世代交代の時期を迎えようとしている同国の歴史的な動きを追っている。

【“若返り”の意味とは】
 カストロ議長は再任された直後の全国放送で、「これが私の最後の任期になる」と演説を行ったとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。同氏は「主な役割を若い世代に徐々に移行していく」と話しながら、政府・党幹部の年齢制限や任期を「2期10年」に制限するなどし、若返りを図っていく方針を明らかにしている。
 とはいえ、社会主義の存続は強く訴えている。副議長に若手のディアスカネル氏を選出したことも、1959年の革命以来の体制を引き継げる人材としてだろう、とみられている。実際アナリストらは、歴史的な世代交代の一歩として評価しつつも、キューバが急激に変化していくことはないだろうと分析している。

 なお米国は今回の発表に対して、「キューバ国民が指導者を選べ、言論の自由が与えられる民主主義が訪れる日をこれからも望んでいく」とコメントしている。

 ガーディアン紙は、引退を決めたカストロ氏の業績を紹介している。同氏は議長に就任以来、民間企業の強化や、海外渡航や不動産売買の自由化など、段階的な規制緩和によって経済的・社会的な改革を行なってきたという。ベネズエラからの石油支援に支えられているものの、不安定な状況にある同盟国に頼らずに国民の需要を満たすため、自国の変化に取り組んできたとしている。

【退任へのカウントダウンによる権力争いも】
 ガーディアン紙は今回の発表に対する人々の反応をまとめている。「新たな時代の幕開けだ。複雑で困難なプロセスになるだろうが、重大な出来事だ」と語る声や、「古株時代は永遠に終わらないと思っていた。夢のようだ。カストロは約束を守ったのだ」と評価する声を取り上げている。
 一方フロリダで暮らす亡命キューバ人は「彼自身が5年後に生存しているかさえも分からない。将来のことは誰にも分からないし、自分自身にとっては大した問題ではない」とし、退任による大きな変化はないと冷静に語っているという。

 またニューヨーク・タイムズ紙によると、アナリストらは、スキャンダルや不忠で失脚した若手人材が多くいる点を挙げ、カストロ氏退任までの5年間、残った有力者たちの間で壮絶な権力争いが起きるだろうと予測しているようだ。

Text by NewSphere 編集部