北朝鮮、ミサイル発射強行のねらいとは?

 12日午前9時51分ごろ、北朝鮮が「人工衛星」と称するミサイルが発射された。ミサイルは沖縄県上空を通過。3つに分離し、それぞれ黄海、東シナ海、フィリピンの東300kmの太平洋上に落下した模様。日本政府は、いずれも予告区域内の洋上に落下したと推定している。日本の領土内への落下物は確認されておらず、破壊措置は実行されなかった。
 日本政府は緊急の安全保障会議を開催。その後に会見した藤村官房長官は、容認できないとして強く非難した。これは4月に比べると迅速な対応だとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じた。
 韓国政府も、国連決議に明らかに反すると非難。アメリカはコメントを発表していない(日本時間13時30分現在)。発射予告期間を延長するという発表があったばかりのため、このタイミングでの発射は、韓国やアメリカには驚きもある、とフィナンシャル・タイムズ紙は報じた。ただ、専門家はこれを「日米韓の監視を減らすためのブラフ」だったと指摘した。

 北朝鮮政府は国営メディアを通じ、発射の成功と人工衛星が軌道に乗ったことを発表した。ただ、本当に成功したかどうかは不透明であり、韓国政府などが調査中だと報じられている。
 なおフィナンシャル・タイムズ紙によると、市場にはほとんど影響を与えておらず、株価・通貨ともに大きな動きは見られないという。航空各社の運航も基本的に通常通りとのこと。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、今回の発射強行がもつ3つの側面を指摘した。
 まず、対内的には4月のミサイル発射の失敗を挽回することで、軍部と信頼関係を強くするため、という面がある。
 次に、対外的には、イラン・パキスタンらへ自国のミサイル技術を売り込むアピールという面がある。ウォール・ストリート・ジャーナル紙も、過去の発射に比べて進歩が見られるため、イランなどには朗報となるとみている。日韓米には脅威になり、警戒を強めている北朝鮮-イラン(他にシリア、ミャンマーなど)間の武器取引がさらに洗練されるおそれもあるという。
 最後に、アメリカなどへのプレッシャーという面がある。アメリカ西海岸が射程内に入れば、核技術と合わせて大きな脅威になる。
 こうした思考と行動は、金正日氏の代と通じる部分が大きい。ブッシュ政権時代に北朝鮮都の外交にあたった米国の専門家は、そのため、金正恩氏が改革を先導するという見込みはなくなったと指摘している。

 今後国連を通じ新たな制裁が検討されると予測されるが、今回ミサイル発射が強行されたことで、これまで4年間の制裁が機能していないので、悩ましい状況だと、ニューヨーク・タイムズ紙は分析している。

Text by NewSphere 編集部