EUの原子炉、ほぼすべて安全対策が必要―原子力論争に影響―

EU 原発  欧州連合(EU)内で稼働中の134の原子炉のうち、ほぼ全てにおいて修理含め安全対策が必要であり、費用総額は最大250億ユーロ(約2.5兆円)に及ぶことがわかった。昨年の福島第一原発事故を受け、これまでの想定を超える天災への備えを調査したストレステスト(耐性検査)の結果である。詳細は欧州委員会が4日に報告書を発表する予定だ。

Financial Timesの報道姿勢―英国、全建て替え望むも費用調達が壁―
 報告書に直接触れてはいないが、英国のほとんどの原子炉が老朽化で建て替えを必要としながらも、費用調達ができずに建設計画が頓挫し続ける現状を伝えた。英国政府はもっと投資家が投資しやすい状況を整えるべきだと論じている。また、その投資元については中国マネーに注目している。

The New York Timesの報道姿勢―事故の教訓生かされず―
 「何百もの技術的対策」が必要な状況であり、1979年のスリーマイル島事故や1986年のチェルノブイリ事故後に合意されたはずの安全対策案が、幾つかの国でいまだに放置されている、とする報告書の指摘を取り上げた。安全対策には欧州型の新型原子炉の導入が効果的だとしている。
 なお、今回のストレステストそのものについて、必要十分に厳しく行ったか疑問を呈する団体職員の声も紹介している。

The Wall Street Journalの報道姿勢―EUで原発廃止の流れ―
 指摘された問題点を詳しく説明した。具体的には、緊急用設備の収納方法、地震の監視体制(主にフランスの一部地域)、メイン原子炉が使用不能になった場合の緊急制御室がない点(主にイギリス)などだ。報告書は政府、反核活動家、公益企業によって注視され、10月18日のEU首脳会議でも扱われるだろうとした。
 こうした現状下、ドイツ、ベルギー、イタリア、そして原子力依存度の高いフランスでも、原子力発電の見直しが既に進んでいるとした。

Text by NewSphere 編集部